著者は40年以上にわたり仏教研究に携わっている。日本への訪問経験もあり、日本の仏教学者との交流も深いとのこと。本書は分かり易い質疑応答形式（99の問答）で仏教を紹介したものである。深い学識に裏付けられ、かつ仏教に関する本質的な問いを投げかけることで読者も仏教とは何かを改めて考えさせられる。
本書の構成は、「第一章 原始仏教の誕生」「第二章 仏教の多様性」「第三章 仏教の教え」「第四章 仏教の修行」「第五章 現代のグローバル仏教」となっており、過不足のない見事な構成である。最後の「第五章 現代のグローバル仏教」は著者でなくては書けない内容と言える。評者が、日本の仏教入門書にはまず見られない本質的な問い掛けだと感じたのは、「仏教とは神を信じているのか？」や「仏教は宗教なのか？もしそうなら、どのような点で宗教なのか？」である。著者が欧米人でキリスト教圏で暮らしているからこそ、このような仏教の本質を見抜いた問い掛けが可能になったのであろう。通常は日本人があまり注意しないこれらの問答を通じて仏教の本質を理解できる。さらに「仏教は宗教なのか？」の説明の中で改めて気付かされたのは、仏教が民族的アイデンティティに基づかないほとんど唯一の「宗教」である、という点である。仏教が世界で受け入れられている理由の一つと言えよう。
監修者である佐々木閑氏の本書への評価「仏教を立体として読者の心に伝達することのできる、知り得る限りでの最良の概説書」（監修者あとがき）に心から同意する。また、英語の仏教書を、分かり易い訳文にするという困難な仕事をされたお二人の訳者に心から感謝したい。
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