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ヴェールの政治学 単行本 – 2012/10/24

4.7 5つ星のうち4.7 2個の評価

2004年、国論を二分する論争のすえ、フランス政府は公立学校でイスラームのスカーフ(ヴェール)など宗教を誇示するものの着用を禁止した。
スカーフは、世俗主義と平等を国是とする共和国の市民を育む学校で政教分離を侵犯し、女性の従属化を持ちこむムスリム移民のイスラーム的野蛮の象徴とされた。
だが放校処分の対象にもなったムスリム少女たちにとって、スカーフは社会で周縁化される自らのアイデンティティを主張し、
尊重を求め、主体であろうとする手段であり、異なる普遍性と近代性を希求する「声」であった。
スカーフ禁止法は、フランスの植民地主義・人種主義・女性差別を否認するナショナリズムが生み出したものにほかならない。
その際、西洋とイスラームでは性差とセクシュアリティへのアプローチが異なることが、
「ムスリムのフランス人」という同化を認めない決定的根拠になっているという。
異質な他者への不寛容が民主主義自体をそこなっていく。排他的でも序列的でもない「共生」社会に必要なものは何か。
合州国きってのジェンダー歴史学者が差別と紛争が日常化する「西洋」の現在と問題の根幹を明らかにする基本図書。
排除ではなく交渉する政治への道を開示する。
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商品の説明

著者について

ジョーン・W・スコット
Joan Wallach Scott
1941年ニューヨークのブルックリンでユダヤ系の家庭に生まれる。1962年にウィスコンシン大学で博士学位取得。現在、(プリンストン)高等研究所社会科学部教授。フランスの労働史を専門とし、英語圏におけるジェンダー歴史学の草分け的存在である。近年はとくに、民主政治が普遍化する力にたいしてジェンダーの特殊性がどのような関係にあるのかを追っている。
著書に、H. B. アダムス賞を受賞したThe Glassworkers of Carmaux: French Craftsmen and Political Action in a Nineteenth Century City (1974),Gender and the Politics of History (1988, 『ジェンダーと歴史学』荻野美穂訳、平凡社ライブラリー)、Only Paradoxes to Offer: French Feminists and the Rights of Man (1996), Parite: Sexual Equality and the Crisis of French Universalism (2005), The Fantasy of Feminist History (2011) など多数。


李孝徳
り・たかのり/イ・ヒョドク
1962年福岡県小倉生まれ。東京外国語大学准教授。表象文化論、ポストコロニアル研究。
著書に『表象空間の近代――明治「日本」のメディア編成』(新曜社、1996)。編著に『継続する植民地主義――ジェンダー/民族/人種/階級』(青弓社、2005)、『沖縄の占領と日本の復興──植民地主義はいかに継続したか』(青弓社、 2006)、『いのちと責任』(大月書店、2012)、『レイシズム・スタディーズ序説』(以文社、2012)、訳書にG・M・フレドリクソン『人種主義の歴史』(2009)など。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ みすず書房 (2012/10/24)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2012/10/24
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 248ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4622076896
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4622076896
  • カスタマーレビュー:
    4.7 5つ星のうち4.7 2個の評価

カスタマーレビュー

星5つ中4.7つ
5つのうち4.7つ
2グローバルレーティング

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上位レビュー、対象国: 日本

2014年5月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヴェールの問題。フランスでもトルコでも問題になっています。フランスの政教分離の実情がわかり大変よかった。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2014年8月12日に日本でレビュー済み
フランスには2013年現在、かつての植民地である北アフリカ地域からの移民やその子孫が約500万人暮らしている(全人口は約6580万人)。その多くはアラブ系ムスリム(イスラム教徒)である。こうした移民の少女を、イスラム女性の習慣であるスカーフ着用を理由に学校教育から締め出す動き(立法、マスコミキャンペーン、学校の施策、等)がある。本書はフランス社会がヴェールを着けた女性を受け止め、扱ってきた経緯と現状を軸に、移民問題を考察している。
※教育現場で問題化し禁止されたのは顔を露出するスカーフ。広い意味で議論の的になっているのがスカーフを含めたヴェール全般である。

スカーフ禁止の背景にあるのは、「世俗主義」や「政教分離」と訳される「ライシテ」という理念だという。この理念が宗教・個人・社会の関係をどのように規定しているか?米国人の著者は、米仏の比較という補助線を用いてフランスの特徴を説明している。

ヴェールに対しては、フランス人、移民の双方が多様なイメージを抱いている。本書はフランスが北アフリカに侵出した19世紀にさかのぼり、植民地時代から独立戦争を経て現在のスカーフ禁止令にいたるまで、ヴェールのイメージが次第に多義的になっていく過程を丁寧にたどる。

文中では多くの資料を引用している。大統領をはじめとする政治家の発言や、植民地時代に書かれた文献、教育関係者の発言など、多様な立場からの禁止を支持する声、反対する声を積み重ねていくことで、フランス人と移民にとってヴェールがどのような存在なのかを浮かび上がらせていく。

ヴェール問題は、移民問題と密接に結びついている。フランス社会では国民の一体感を重視する視点から、移民を旧来のフランス人に同化させるための政策や議論が重ねられてきた。それでいて、現在もフランス人の中に根強く残る差別が、移民の同化を妨げてもいるという。こうした国民の一体感という文脈でヴェールの問題を論じている。

ヴェール問題は民族・宗教の問題であるとともに、女性の社会的地位に関わる問題でもある。スカーフ禁止を求める人が、女性が自らの性をどのように扱うべきだと考えているか?新旧の資料や女性の地位向上を掲げるフェミニストの発言を通じて、単なる服装の話ではなく、性のあり方という根本的な次元まで掘り下げて分析している。

さらにスカーフを被る少女本人の証言についても考察が及ぶ。複数の証言を読むと、スカーフを被るにいたった理由、身近な人の反応やその後の行動も、決して画一的なものではないことがわかる。

こうした多面的なアプローチから、旧来のフランス人が移民やイスラム教に対して抱いているマイナスなイメージがないまぜになって、スカーフを禁止する気運を形成していることが見えてくる。同時に、移民の側もヴェールについて肯定的な意味でも否定的な意味でも、一筋縄では語れない思いを抱いていることが見えてくる。

評者としては、納得感をもって読み進めたが、読者によっては納得しがたく感じる面もあると思う。
著者本人はスカーフ禁止に反対する立場を明確にしている。中立的な立場から見れば、違った見解が出てくるかもしれない。
また著者自身による直接取材の割合は多くない。著者自身が問題の渦中に身を置いているわけでもない。当事者の生の声や素顔を知りたい読者には物足りなく感じられるかもしれない。

全体に社会学の用語が頻出する点では読者を選ぶ本かもしれない。しかしフランス人のヴェールとの出会いから現在にいたるまで、歴史的な経緯を丁寧に説明しているので、歴史や時事についてはほとんど予備知識なしに読める。抽象的で分かりにくい文もあるが、読み飛ばしても全体的な内容は理解できる。
日本在住の外国人について考えたい人や、フェミニズムについて勉強しているような人には、多くの気付きを与えてくれる本だと思う。
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