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牧神の影 (ちくま文庫) 文庫 – 2018/6/8

4.1 5つ星のうち4.1 9個の評価

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暗号法に取り組んでいた伯父の死をきっかけに、ヒロインの周囲で不可解な出来事が次々と起こる。マクロイ円熟期の暗号ミステリ。解…
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房 (2018/6/8)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2018/6/8
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 384ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4480435131
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480435132
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.5 x 1.5 x 14.8 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.1 5つ星のうち4.1 9個の評価

カスタマーレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

2018年6月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヘレン・マクロイの1944年の作品「Panic」の本邦初訳である。前年の1943年に「小鬼の市」と「The One That Got Away」(たぶん未訳)が出ており、翌年の1945年に「ひとりで歩く女」が出ている。本書はウィリング博士の登場しないノン・シリーズ本である。
以下なるべくネタ割りにならないように心掛けるが、そうなった場合はご容赦願いたい。
マクロイの未訳の作品が翻訳出版されたことは、とてもうれしい。本小説には一、暗号小説、二、ゴジック・ロマン、三、本格ミステリーの3つの側面がある。
一、 暗号小説・・いわゆる「戦地用暗号」を取り扱ったもので、謎として提示される暗号文書(長文のダイイング・メッセージ)は複雑極まりない。おそらく、この暗号の解けた日本人読者はほとんどゼロと思うし、解こうと試みた(この先試みる)読者もきわめて少ないのではないかと思う。ただ、解く方法の説明を聞いているのは、それなりに面白い。
二、 若いヒロインが田舎(というよりほぼ山中)の一人暮らしで体験する、困難、恐怖、特異な人間関係、成長が本書のメインテーマとなっており、ここはたいへん面白い。
三、 殺人事件の謎の解明という点では、ちょっと「肩すかし」のように思った、(悪いわけではないが)
結論。二の部分が面白かった。
7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2018年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
山奥のコッテージに孤立する女性主人公に迫る正体不明の脅威。自然描写の豊かさと、感情表現の巧みさで、実にハラハラさせてくれる。また、女性どうしの感情の鞘当て的場面は、なかなか男の作家には書けないものだろう。
そういう豊かな叙情と同時に、暗号小説としては極めて骨太に論理的である。暗号文も、その解読後の平文(英語)もフェアに明示してあるので、気力のある方は解読に挑戦されてみるとよい。(怠惰な評者は、3ページにもわたる暗号文を見ただけでげっそりしてしまったが…。一見無意味な記号の膨大な羅列を校正した翻訳者と編集者の献身に敬意を表したい。)
「訳者あとがき」における暗号と暗号小説についての詳細な解説も大変面白かった。なお、この「訳者あとがき」はその性格上完全にネタバレなので、くれぐれも本編読了前に読んではいけない。念のため申し添える。
24人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2019年3月13日に日本でレビュー済み
本書は女性主人公の孤立したコテージでの恐怖、事件の謎解き、暗号解読の3つの部分から成り立っている。
恐怖についてはマクロイお得意の心理サスペンスが冴えわたり、ヒッチコック映画のヒロインを彷彿させるようで非常に面白いと思う。
事件の謎解きについては、容疑者が少ない上、あるものが非常に重要なヒントを与えるように仕組まれているが、それについて書かれた記述の部分を注意深く読んでいると、自ずと犯人の目星はついてしまう。
暗号解読については、英語のアルファベットを使用しない我々日本人では言語学的に圧倒的に不利であるし、解読についての解説を聞いてもわかったようなわからないような感じで、暗号解読に興味がなければこの部分は省略してしまっても差し支えないと思う。
英語を母国語とする人であれば、暗号解読でうなる部分もあると思えるのであるが、自分的にはこの部分はストレスでしかなかったので★は1つマイナス。
2018年6月11日に日本でレビュー済み
1944年に刊行されたノン・シリーズ作品だが、海外での評価はすこぶる高く、H・R・F・キーティングが『暗い鏡の中に』(1950年)と並ぶマクロイの代表作として挙げた長編。
人里離れたコテージを舞台にヒロインに迫る危険、美しく幽玄な自然描写の巧みさが相まって醸造されるゴシックスリラー的なサスペンスの高まりにページをめくる手が止まらない。またプロットの中心に据えられる暗号の巧妙さは著者がアメリカ軍の専門家ですら解読に失敗したと自負したほどであり、第二次大戦を背景にした暗号ミステリとしても第一級の面白さだ。そして原題 Panicを『牧神の影』と名付けたセンスの良さには感心する他ない。
巻末に寄せられた二つの解説、詳細な暗号論を含む学究的な訳者、マクロイ作品における描写のディテールの豊かさを語る山崎まどか氏、どちらも読み応え充分で本書の価値をさらに高めている。
15人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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