本書は(未完だった?)
東方美人 オリエンタル・ビューティー (ショコラノベルス)
と
東方美人2 千年王国 (ショコラノベルス)
の
加筆修正版だそうで、来月に続編(完結)が出るようです。
上記の3巻立て予定の作品を今回は2巻立てにしたため、文庫にしては少し厚めの300頁超です。
1980年代の旧ソ連やドイツの綿密な描写で綴られた硬派なお話でした。
【以下、少々本文の内容に触れます。ご注意ください。】
KGBの情報員であるアレクセイ(アリョーシャ・アーシャ)とその上官エーリク・サエキ(コードネーム『伯爵』)は、
諜報活動のため、西ベルリンに潜み、同居生活を始めます。
ある日、諜報活動の一部として、他の仲間と一緒に身分を偽って英大使館のパーティに潜入するアレクセイとサエキ。
そこでNATOの委員を色仕掛けで落とすサエキとその決定的な現場を写真に収めるアレクセイ。
けれど、アレクセイはシャッターを切りながら、苦い想いを噛みしめ……。
他方想いを抑えながら、サエキに秘した別の任務をもこなすアレクセイ。
しかしサエキの方も人当たりが良く「ソビエトの良心」とも言うべき朗らかなアレクセイに惹かれていき、
二人は熱い一夜を迎えます。
ところがやがて、その別の任務についてアレクセイが危惧した結果になり……アレクセイはある決断を下します。
殺伐とした、誰にも心を許せないような状況で揺れる二人の心情がとても切なかったです。
イラストも美しく、本編の雰囲気を膨らませてくれました。
ところで主役CPとは関係ないですが、サエキと『鉄の女』ソフィアの掛け合いが愉しかったです。
双方美人で知的でお互いを嫌ってる二人ですが、ある意味同族嫌悪な感じでコミカルでした。
彼女が後にアレクセイに語る情報員の孤独や祖国に対する複雑な思いも身につまされるものがあります。
時代考証やその他設定がしっかりしていて
(といっても私はその辺の事情に詳しくないのでどの程度フィクションが入っているのか判らないのですが)、
当時の雰囲気を存分に味わうことができました。
続きが待ち遠しいです。
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東方美人(オリエンタル・ビューティー) (幻冬舎ルチル文庫) 文庫 – 2014/1/17
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KGB情報員アレクセイは美貌の上官サエキに惹かれ…。旧体制時代のドイツに咲いたドラマティックロマンス、完全文庫化!
- 本の長さ318ページ
- 言語日本語
- 出版社幻冬舎コミックス
- 発売日2014/1/17
- ISBN-104344830334
- ISBN-13978-4344830332
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登録情報
- 出版社 : 幻冬舎コミックス (2014/1/17)
- 発売日 : 2014/1/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 318ページ
- ISBN-10 : 4344830334
- ISBN-13 : 978-4344830332
- Amazon 売れ筋ランキング: - 231,874位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
工作員という存在は、あとでそれが発覚した時「まさかあの、人好きのする温厚で大らかで気さくな人が?」と
関わった周囲の人を驚かせるケースがありますが、
このドラマによると、そのような、人に好かれる本質も工作員の素質の一つになりうるそうです。
海軍将校だったアレクセイは、情報工作員に抜擢されて、西ベルリンに送りこまれるのですが、
まさにそのような性質。
従順で折り目正しく、素朴な明るさもある。
観察眼と適応力に優れてはいても、諜報機関の駒として良心や道徳心をすてた活動が出来るようにはとても見えない・・。
しかし、そこがこのドラマで突出して描きこまれているところです。
読んでいるうちに、アレクセイだけには汚れ仕事はさせないで!と思ってしまうぐらいに、
情報工作員の仕事はいつかアレクセイをダメにしてしまうのでは?と心配が募ってきます。
アレクセイは祖国ソビエトの矛盾や行き詰まりを十分感じた上で、
それでも普通に故郷を愛する青年です。
国家、というよりもっと身近な故郷のイメージで国を懐かしむんですよね、彼は。
情報員としてまだ何の実績もなく、西側に到着し豊かで自由な世界に目をみはるばかりのアレクセイを
トレーニングするために受け入れる上司の工作員サエキ。
サエキはソビエトのために汚れ仕事までしているのに、日英のハーフでロシア人ですらなく、
英国や日本で育った生い立ちもあり、アレクセイと対照的に故郷も曖昧な根無し草のような男なのです。
サエキは、教育係として西ベルリンでアレクセイと同居するうちに、アレクセイの持つ懐の深さや素朴な優しさに魅かれてしまう。
アレクセイもまた、自然とエキセントリックなサエキに魅かれる。
アレクセイの場合は若さゆえにのめり込んでいく、と言う感じ。
そのたまらないサエキへの思いは突然、何の前触れもないところであふれてしまうのですが、ここがもう、読んでいて頭がグラグラするぐらい
官能的でした。
きっかけとなる言葉はあっても、そのあとは言葉をほとんど交わすこともなく、目の前に絡み合う息遣いや湿り気を感じる文で行為だけが描かれ、
挿絵を抑えた理由もなんとなくわかりました。
とにかくその世界に没頭して想像力をうんと刺激されて欲しいです。
怜悧な上司であるサエキが、アレクセイに、ついに甘えるところとか。
西ベルリンに拠点を置くサエキたち情報工作員のグループの一人一人も魅力的な人物ですが、
仲間同士、お互いにいつ裏切られるか、いつ売られるか、監視し合っているのが常です。
その一人が語る工作員の行く末、親しい人達を欺き、自分を偽りつづける生き方の末路、
アイデンティティというのか、人格というのか、
そういうものが蝕まれていくという予言めいた言い分が地味に後を引きます。
アレクセイやサエキがそんな末路をたどりませんように、という気分です。
日常のささやかな優しい光景の積み重ねの背景では大きな歯車が不穏が動いていて、続編が早く読みたいです。読
関わった周囲の人を驚かせるケースがありますが、
このドラマによると、そのような、人に好かれる本質も工作員の素質の一つになりうるそうです。
海軍将校だったアレクセイは、情報工作員に抜擢されて、西ベルリンに送りこまれるのですが、
まさにそのような性質。
従順で折り目正しく、素朴な明るさもある。
観察眼と適応力に優れてはいても、諜報機関の駒として良心や道徳心をすてた活動が出来るようにはとても見えない・・。
しかし、そこがこのドラマで突出して描きこまれているところです。
読んでいるうちに、アレクセイだけには汚れ仕事はさせないで!と思ってしまうぐらいに、
情報工作員の仕事はいつかアレクセイをダメにしてしまうのでは?と心配が募ってきます。
アレクセイは祖国ソビエトの矛盾や行き詰まりを十分感じた上で、
それでも普通に故郷を愛する青年です。
国家、というよりもっと身近な故郷のイメージで国を懐かしむんですよね、彼は。
情報員としてまだ何の実績もなく、西側に到着し豊かで自由な世界に目をみはるばかりのアレクセイを
トレーニングするために受け入れる上司の工作員サエキ。
サエキはソビエトのために汚れ仕事までしているのに、日英のハーフでロシア人ですらなく、
英国や日本で育った生い立ちもあり、アレクセイと対照的に故郷も曖昧な根無し草のような男なのです。
サエキは、教育係として西ベルリンでアレクセイと同居するうちに、アレクセイの持つ懐の深さや素朴な優しさに魅かれてしまう。
アレクセイもまた、自然とエキセントリックなサエキに魅かれる。
アレクセイの場合は若さゆえにのめり込んでいく、と言う感じ。
そのたまらないサエキへの思いは突然、何の前触れもないところであふれてしまうのですが、ここがもう、読んでいて頭がグラグラするぐらい
官能的でした。
きっかけとなる言葉はあっても、そのあとは言葉をほとんど交わすこともなく、目の前に絡み合う息遣いや湿り気を感じる文で行為だけが描かれ、
挿絵を抑えた理由もなんとなくわかりました。
とにかくその世界に没頭して想像力をうんと刺激されて欲しいです。
怜悧な上司であるサエキが、アレクセイに、ついに甘えるところとか。
西ベルリンに拠点を置くサエキたち情報工作員のグループの一人一人も魅力的な人物ですが、
仲間同士、お互いにいつ裏切られるか、いつ売られるか、監視し合っているのが常です。
その一人が語る工作員の行く末、親しい人達を欺き、自分を偽りつづける生き方の末路、
アイデンティティというのか、人格というのか、
そういうものが蝕まれていくという予言めいた言い分が地味に後を引きます。
アレクセイやサエキがそんな末路をたどりませんように、という気分です。
日常のささやかな優しい光景の積み重ねの背景では大きな歯車が不穏が動いていて、続編が早く読みたいです。読
2014年2月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ベルリンの壁があった時代であることと、一度入ったら自由がなくなる情報工作員達の話であることと、共産国という自由の無い国が絡んでくるということで、常に鬱々と・・・また、神経を張り詰めながら読みました。
「東方美人」と呼ばれるサエキの、繊細で時にエロティックな美しさを雨澄先生のイラストで、上手く表現していますね。
是非一度、機嫌のよい時の彼の口ずさむ歌が聞いてみたいものです。
そして、ともすれば暗くなりがちな話に、アリョーシャの(工作員らしからぬ)優しくも大らかな人物を置く事によって、どこか救われる気がするのは、さすが。かわい先生の腕前の良さが光っています。
常に、誰も味方がいない状況で、常に神経を張り詰めながらも反面で心許せる人を欲しがるサエキの心の揺れと、自然と互いに惹かれあっていく2人のせつなくもやるせない恋物語。
後篇を読むのが少ししんどく思える終わり方なのですが、続きがとても気になります。
重い話、スパイもの、シリアスな恋がお好きな方は是非・・・。
「東方美人」と呼ばれるサエキの、繊細で時にエロティックな美しさを雨澄先生のイラストで、上手く表現していますね。
是非一度、機嫌のよい時の彼の口ずさむ歌が聞いてみたいものです。
そして、ともすれば暗くなりがちな話に、アリョーシャの(工作員らしからぬ)優しくも大らかな人物を置く事によって、どこか救われる気がするのは、さすが。かわい先生の腕前の良さが光っています。
常に、誰も味方がいない状況で、常に神経を張り詰めながらも反面で心許せる人を欲しがるサエキの心の揺れと、自然と互いに惹かれあっていく2人のせつなくもやるせない恋物語。
後篇を読むのが少ししんどく思える終わり方なのですが、続きがとても気になります。
重い話、スパイもの、シリアスな恋がお好きな方は是非・・・。
2015年1月3日に日本でレビュー済み
ちょっと話は堅いけど、久しぶりに読んだかわい有美子さんやっぱり好きです。主人公のまっすぐな誠実さと、サエキの謎めいた美しさと、
誰も信用できないという張り詰めた世界。なんとなく悲劇的な最後が連想されてドキドキしながら読みました。ところであとがきに2巻とありましたが、続きはでているのですか?
誰も信用できないという張り詰めた世界。なんとなく悲劇的な最後が連想されてドキドキしながら読みました。ところであとがきに2巻とありましたが、続きはでているのですか?