松田さんの181日

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905556

感想・レビュー・書評

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  • 平岡陽明さんのデビュー作「松田さんの181日」
    絶妙の6篇、どれもよかった
    文章が平易で読みやすく、登場人物に味がある
    私の大好きな奥田英朗さんのタッチに似ているなと思った

    「松田さんの181日」
    売れない脚本家寺田は、末期がんの役者松田の自伝の依頼を受け、松田の最期の181日に密着することに
    松田さんの最後の舞台が感動的!
    ラストも秀逸!

    「床屋とプロゴルファー」
    レッスンプロの西田は廃業覚悟で、トーナメントのシード権獲得のため最後の挑戦をする
    そのために藁をも掴む気持ちで床屋の久さんに教えを請うことに
    ゴルフのルールも知らない久さんの教えに私まで目から鱗! メモりたくなった

    「僕だけのエンターテイナー」
    見栄っ張りで大ぽら吹き、ヤクザ映画のオーディションがあったら、らしすぎるという理由で落とされること間違いなしの井吹さん
    ひょんなことから17歳のひと夏、井吹さんに預けられることになった僕
    井吹さんから課せられた3つの宿題とは?
    そしてその課題を果たすことができるのか?

    「浜えんぴつ燃ゆ」
    経営が芳しくない浜えんぴつの山本専務は、社長から4人のリストラを断行するよう言い渡される
    その汚れ役を請け負った首切りジョージの手にかかると
    リストラを宣告された4人の顔が晴々と輝き出す・・・
    ジョージの戦法とは何ぞや?

    「寺子屋ブラザー篠田」
    人生で大切なことは、すべて信田兄弟が教えてくれた
    大人になるとは曖昧になること、人生の天才はいないこと、ボール球で三振を取れるピッチャーも素晴らしいこと、トイレの洗面台を拭く人間は偉いこと・・・
    私も篠田塾に入って、人生の教えを請いたい
    私的に6篇中一推し!

    「マリーさんの101日」
    一作目の女性バージョン
    群馬県の地方都市にある色もん小屋(※色もんとは落語講談以外の芸事をいうらしい)に身を置く腹話術師のターさん
    余命何ヶ月かという世話女房のマリーさんを放ってターさんが姿をくらましてしまう
    戻ってきたターさんの手には大きな荷物が
    ターさんがあゆむ君とマリーさんの人形を両手に抱えて マリーさんの前で演じる腹話術にの目頭が熱くなる

    お気に入りの作家さんをまた一人見つけた
    しばらく平岡陽明さんを追ってみよう

  • これって、ノンフィクションなんだよね…!?
    えっ…フィクション…!?
    と思わせる話だった。
    ゴルフや麻雀のルールが分からないから、
    読み飛ばした部分もあるけど、人情味溢れる作品だったよ。

    松田さんの181日
    売れない役者の松田さんが死ぬまでの日々。
    床屋とプロゴルファー
    悟りをひらいた床屋がプロを目指すゴルファーに教える。
    僕だけのエンターテイナー
    ワルな井吹さんに預けられた17歳の夏休み。
    浜えんぴつ燃ゆ
    家老として、会社のために生きていく。
    寺子屋ブラザー篠田
    お金のかからない塾でいろいろなことを教わる。
    マリーさんの101日
    3回目の結婚。腹話術人形のあゆむくん。

    松田さんの181日と、マリーさんの101日は
    なんとなぁーく、話が繋がってるよ。
    個人的には、マリーさんの方が好きだったなぁー。
    いやー、なんか良かったなぁー。

  • 掛値なしの星5つ。デビュー作を含め6篇全てが粒揃いの作品。巧緻な心理描写、計算された構成、行間に溢れる機微…説得力ある筆力で共感と人情を生み出す。温かくて笑えて泣かせる素敵な一冊です。

  • 人情話のつまった本。良い話が詰まってます。『寺小屋~』が好きかな

  • ほし

  •  6編からなる短編集。
     1話目の表題作は、「オール読物」新人賞受賞作。

          * * * * *

     表題作は、さすが新人賞にふさわしい出来栄えでした。
     人間としての度量があり役者としての技量にも優れながら、「華がない」という、自分ではどうしようもない弱点のためにメジャーになれない。それでも、そんな不条理に動ずることなく飄々と役者人生を全うする松田さんの姿が心を打ちます。

     この「松田さんの 181日」で狂言回しを務めた7流脚本家・寺田は、最終話「マリーさんの 101日」でも同様の役割を演じていて、松田さんの最期に寄り添った時間が寺田にとって糧(少しばかりだが)となり、「舞台」や「舞台人」への理解につながったことがわかります。
     主人公としては凡庸ですが、それが却って語る対象を引き立てることになっているのだろうと思いました。

     個人的に気に入った話は、4話目「浜えんぴつ燃ゆ」と5話目「寺子屋ブラザー篠田」で、読後の味わいが好みに合っていました。

     平岡さんは短編にも適性があることがわかり、うれしくなりました。

  • 2022/03/06予約 1

    松田さんの181日
    タイトル作、とても良かった。
    売れない役者が最後に演じる舞台。
    そこでは思いがけない演出というか告白が、セッティングされていた。
    最後の舞台を、過去に捨てた息子が妻子を連れて観に来た。そして会うことなく帰った。
    それが良かったんだと思う。

    松田さんは役者だから、言動の端々が絵になる、サマになる。
    そんな人を実際に目で見てみたいと思う。

  •  平岡陽明「松田さんの181日」、2016.11発行、連作と独立の短編6話。タイトルにもなっている「松田さんの181日」が良かったです。ゴルフや麻雀など私がやらないことがテーマの話があったからか、全般的にイマイチな印象が残りました。

  • 余命半年の売れない役者。
    華は無いが人望はある、劇団の生き字引だ。
    平々凡々な波乱のない人生を
    送ってきたと思いきや、
    人に歴史ありでそれなりの事情を抱える。
    スポンサーの依頼で、
    そんな役者の最後の半年に密着して
    本を書くことになったお話。
    やたらと可愛がってくれる、
    よくしてくれると思いきや、
    そこにはそれなりの理由があると分かる。

    表題にもなっている「松田さんとの181日」
    を含む6つの短編集。
    著者紹介を読みながら
    経歴が違うなと思うも、
    ずっとルポタージュと思い込んでた。
    そうではなく小説だった。
    そう思わせるだけの人物描写、
    世界観の構築が上手い。
    ドラマチックな出来事が起きるのだけれど、
    起こってもおかしくないと思わせる
    リアリティがある。

    一点の曇りのない真っ直ぐなお話ではない。
    問題を抱えていたり、不完全だったり、
    欠点があったりする。
    順風満帆なエリートの一本道ではない。
    そんな人生じゃ面白くない。
    曲がり道、くねり道、でこぼこ道。
    その道端に繁る雑草の生命力、
    さりげなく咲く野花の可憐さ。
    そんなものを感じさせる珠玉の物語。

  •  昨夏に刊行された初長編『ライオンズ、1958。』が素晴らしかった気鋭の新人の、2冊目の単行本。
     オール讀物新人賞を受賞したデビュー作「松田さんの181日」を中心に、昨年までに『オール讀物』誌上で発表されてきた短編を集めたものだ(1編のみ書き下ろし)。

     素晴らしいクオリティの短編集である。
     収録作6編のうち、「寺子屋ブラザー篠田」だけはピンとこなかったが(失敗作だと思う)、ほかの5編は甲乙つけがたい傑作だ。「力の抜き方」まですでに心得ている手慣れた筆運びは、新人離れしている。

     いずれの作品も、広義の「人情ドラマ」である。
     ほどよいユーモア、巧みな「泣かせ」(とくに、表題作「松田さんの181日」と、その続編にあたる「マリーさんの101日」のクライマックスは泣ける)、快調なテンポとリーダビリティ、キャラ立ちの妙……といった特長を兼ね備えているあたり、浅田次郎を彷彿とさせる。

     浅田次郎の後継者になり得る人だと思うし、近い将来、直木賞が獲れる人だと思う。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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