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サブリナ 単行本 – 2019/10/17
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購入オプションとあわせ買い
グラフィックノベル初のブッカー賞ノミネート作品
ある女性が失踪した。その後、彼女に関する衝撃的な映像を収めたテープが新聞社に送られてくる。その映像はインターネットを席捲し、噂や憶測、陰謀論が湧き上がる。ゼイディー・スミス、エイドリアン・トミネ絶賛。現代社会を映し出す傑作グラフィックノベル。
【メディア紹介続々! 】
朝日新聞(2019/10/30)文芸時評--小野正嗣氏
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(2019/11/6)カルチャートーク――カラテカ矢部太郎氏
マンバ通信(2019/11/8)ーー原正人氏
朝日新聞(2019/11/10)エンタメ地図 おすすめ3冊――円城塔氏
週刊ポスト(2019/11/11)書評――鴻巣友季子氏
共同通信(2019/11)記者のおすすめ
NHKラジオ第1「すっぴん! 」(2019/12/2)ーートミヤマユキコ氏
産経新聞(2019/12/8)書評ーー浅暮三文氏
本の雑誌(2020/1月号)書評ーー林さかな氏
BRUTUS(2020/1/1・15号)ーー原正人氏
女性セブン(2020/1/2・9号)「2019年の3冊」――トミヤマユキコ氏
読売新聞(2019/12/22)「2019年の3冊」ーー村田沙耶香氏
フリースタイル44(2019/12/25)「THE BEST MANGA 2020」18位
婦人公論(2020/1/28号)「BOOK」――豊崎由美氏
文藝(2020年春号)書評ーー木澤佐登志氏
THE NIKKEI MAGAZINE STYLE Ai (vol.206)書評ーー山崎まどか氏
朝日新聞(2020/1/11)読書面ーー横尾忠則氏
ある女性が失踪した。その後、彼女に関する衝撃的な映像を収めたテープが新聞社に送られてくる。その映像はインターネットを席捲し、噂や憶測、陰謀論が湧き上がる。ゼイディー・スミス、エイドリアン・トミネ絶賛。現代社会を映し出す傑作グラフィックノベル。
【メディア紹介続々! 】
朝日新聞(2019/10/30)文芸時評--小野正嗣氏
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(2019/11/6)カルチャートーク――カラテカ矢部太郎氏
マンバ通信(2019/11/8)ーー原正人氏
朝日新聞(2019/11/10)エンタメ地図 おすすめ3冊――円城塔氏
週刊ポスト(2019/11/11)書評――鴻巣友季子氏
共同通信(2019/11)記者のおすすめ
NHKラジオ第1「すっぴん! 」(2019/12/2)ーートミヤマユキコ氏
産経新聞(2019/12/8)書評ーー浅暮三文氏
本の雑誌(2020/1月号)書評ーー林さかな氏
BRUTUS(2020/1/1・15号)ーー原正人氏
女性セブン(2020/1/2・9号)「2019年の3冊」――トミヤマユキコ氏
読売新聞(2019/12/22)「2019年の3冊」ーー村田沙耶香氏
フリースタイル44(2019/12/25)「THE BEST MANGA 2020」18位
婦人公論(2020/1/28号)「BOOK」――豊崎由美氏
文藝(2020年春号)書評ーー木澤佐登志氏
THE NIKKEI MAGAZINE STYLE Ai (vol.206)書評ーー山崎まどか氏
朝日新聞(2020/1/11)読書面ーー横尾忠則氏
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2019/10/17
- 寸法19 x 1.7 x 24.1 cm
- ISBN-10415209883X
- ISBN-13978-4152098832
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2019/10/17)
- 発売日 : 2019/10/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 415209883X
- ISBN-13 : 978-4152098832
- 寸法 : 19 x 1.7 x 24.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 327,600位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
信頼できる知人に勧められ購入。素晴らしかった。
グラフィックノベルというものも初めて手に取ったが、特にこちらは色使いやコマ送り、余白に現れる感情の機微が素晴らしい。
とても現代社会的で、考えさせられる問題作だった。
グラフィックノベルというものも初めて手に取ったが、特にこちらは色使いやコマ送り、余白に現れる感情の機微が素晴らしい。
とても現代社会的で、考えさせられる問題作だった。
2023年12月12日に日本でレビュー済み
女性の失踪事件を境に、その恋人や家族、関係者がネットの悪意に翻弄されたり、陰謀論の餌食になっていったりする話
無機質なコマ割り、鬱々としたカラーリング、全く読めない表情など今まで読んだ漫画と変わっていて、ショックを受けた なんかやばいのはわかるがうまく言語化できない
無機質なコマ割り、鬱々としたカラーリング、全く読めない表情など今まで読んだ漫画と変わっていて、ショックを受けた なんかやばいのはわかるがうまく言語化できない
2020年5月16日に日本でレビュー済み
まさに今の世相、現代アメリカだけでなく、日本も映し出すような漫画。 無言で感情の乏しい人物の顔と、可愛らしくさえある寂しい色調。昔のテレビゲームの中の街並みみたいに平板で人影がない郊外。 画面いっぱいに無言の絶叫が金切り声で響いているような静けさである。 どこをつまみ上げても悪夢だから、すごい。 一読では足りず、何度もページを開いてみる。 何気ない場面、ゾッとするセリフにハッとする。 誰の心にも触れられない、寂しさというか怖さというか。誰にも感情移入できない。 作品世界は、プツンと終わるけれど、もっとこの世界の住人についての話を読みたい。 買って、大満足。 他の作品も、早く翻訳がでないだろうか。
2019年12月6日に日本でレビュー済み
「うわあああ!!」(48頁)
「あああ!」(65頁)
「キンコン」(91頁) ピンポン
「こんこん」(91頁) ドアをノックする音
「うわあああああ!」(116頁)
「BANG BANG」(202頁) バンバン。拳銃の発射音? 違う、酔っ払い男がドアを拳でたたく音
こんなにも<叫び声>や<騒音>があふれている漫画なのに、
音が消えると、よけいに無音を感じさせる漫画小説です。
人も突然消えると、よけいにその人の存在を感じる。
サブリナ、どこへ行っちゃったの?
《備考》
この漫画小説は、読者が自分なりにストーリーを解釈しながら、
信じる方向に、つじつまが合うように補っていく必要がありそうです。
登場人物の顔が、どれも似通っていて、いろいろなストーリーが可能です。
例えば、殺人事件として読んでみたらどうなるでしょう。
サブリナが消えた。この事実だけで、もしかして殺されたのでは?
と考えると、犯人は? 遺体は? 証拠は?
「サブリナが消えた」は、本書に付いている「帯」のキャッチコピーです。
この本のないようは、サスペンス小説の漫画ではないようです。
現代の情報社会の問題点を指摘した小説風の漫画ではないかと思います。
現代の情報社会には、<フェイク>情報が氾濫しています。
ただただデタラメな情報だけでなく、
巧妙に偽造、偽装され、権威付けられた情報もたくさん流れています。
最初は<アハハ>と笑うしかない幼稚な偽物情報でも、
時間が経つと偽物であることを忘れてしまい、
うっかりだまされてしまうことだってあります。
「リアルっぽい」(7頁)情報が多いので、
つい「フェイクだって忘れてた」(7頁)ことになりそうな、
今やそんなあやうい情報社会になっています。
噂がうわさを呼び、
どの情報を信じてよいのか分からなくなり、情報の海でおぼれそうになったり、
混乱して不安になり、どこか静かで安心できる場所へ逃げ出したくもなります。
この漫画小説は、アメリカの現代社会の生活状況をテーマに描かれています。
物語は、次のようなプロットが淡々と延々と続きます。
一番(4頁) 最初、姉サブリナの実家。妹サンドラが仕事帰りに寄って話をしていく。
二番(14頁) サブリナの恋人テディが、幼馴染の友人カルヴィンの家に泊めてもらう。
三番(24頁) カルヴィンの職場は、コロラド州シャイアン・マウンテン近くの軍の地下壕。
四番(34頁) カルヴィンの家の居間。テディとカルヴィンがビールとピザで夕食。
五番(40頁) 夕食中に、9.11同時多発テロから16周年のテレビ番組を観る。
六番(42頁) 再び、カルヴィンの家の居間でテディが酔いつぶれる。
七番(46頁) その夜の夢。テディ、悪夢を見て大声で叫ぶ。
八番(49頁) 次の日の朝。カルヴィンの妻ジャッキーと娘のシシとテレビ電話。
九番(52頁) カルヴィンのスマホに、妹サンドラから電話が入る。
「サブリナのバスの定期券」(52頁)が入った手紙が両親の家に届いた、
とテディに伝えて、との依頼。
サブリナは、どこかで生きているのか?
こんな調子のプロットが延々と、淡々と、はるかかなた205頁まで続きます。
そして、最後の頁、205頁には、
森の小道を一人で自転車を走らす女性の姿。
行方不明だったサブリナに似た顔の女性(男性?)。
自転車の後ろには小さなバッグが二つだけ。
気楽で自由なサイクリングの一人旅のように見えます。
ネット情報では、サブリナは殺されたのですから、
こんな田舎道を自転車で走っているわけがないか? わけわかんない。
妹サンドラと自転車旅行の話をする姉サブリナは、
はじめのうちは「行っといでよ!」と自分は乗り気ではない様子でした。
ところが、そのうち、
「よさげじゃない。 街から離れて、ネットからも離れて。」(10頁)
と変わっていきます。
サブリナのこころの中には、街から離れてみたい、ネットからも離れてみたい、
という潜在的な欲求があったようです。
行方不明となったサブリナは、
インターネット上では勝手に<殺された>ことにされてしまいました。
死体もないのに「サブリナ・ギャロ殺人事件」(123頁)なんて呼ばれる始末。
人をも殺す、恐ろしいネット社会です。
サブリナの妹や両親までが、サブリナは<死んだ>ものと思い込んでしまい、
あきらめて葬儀を出してしまう始末。
あきらめの良すぎる家族、世の中でしょう。言葉がありません。
「サブリナが消えた」本当の理由は?
最後の最後の「205頁」をご覧ください。ふむふむ。
繊細で複雑な心理は、シンプルな描線の漫画で描き、
抽象的、哲学的な内容は、吹き出しの文字で文学的に書いています。
電子メールの場面では、<文字だけ>の文学的なコマになっています。
この『サブリナ』は、グラフィック・ノベル。
漫画の良さと、文字の小説の良さが結合・コラボして、
独特の味わい深い、グラフィック・ノベルの世界が表出しています。
何を述べるというのでしょうか。
アメリカ社会にあふれる、
男女の問題、夫婦の問題、軍隊の問題、銃規制の問題、9.11テロの問題、
インターネット社会のフェイクニュース問題、ペット依存症の問題、老人問題などを、
この本は描いています。
どれもこれも解決の難しい問題ばかりです。
個人的には優しくて思いやりのある、いい人達ばかりのアメリカなのに。
なんでアメリカ社会にはこんなにたくさんの問題が絡み合ってこんがらがって、
解決困難になっているのでしょう。
「いったいどうすればいいの」(61頁)
本書タイトルの『サブリナ』は、主人公の女性「サブリナ・ギャロ」(32頁)の名前。
「27歳」(83頁)なのに落ち着いていて、おばさん風の女性。恋人は「テッド」。
口絵のイラストは、サブリナのようです。
左手の手のひらを(サブリナは左利き。13頁参照)カメラに向けて、
さえぎるようにしています。
ちょっとお、写すのやめて。 ネットに投稿したり絶対にしないでよね!
と言っているように感じました。
何の変哲もない、退屈そうなサブリナの日々の場面から、物語は始まります。
サブリナの仕事は、夜の仕事。誰もいない時間帯に建物の中を清掃する仕事らしい。
妹のサンドラと何気なく、自転車で回る五大湖の旅の話をしていたサブリナ。
ある日の朝、仕事から帰ってくる途中に行方不明になります。
行方不明になってから「ひと月」(本書の「帯」より)、
恋人「テディ・キング」(121頁)はすっかり腑抜け状態のようになってしまい、
コロラド州に住む、幼馴染の友人カルヴィン・ローベルを訪ねます。
カルヴィンの奥さんと娘は家を出て、フロリダに行ってしまっています。
軍人カルヴィンの勤務地は、「コロラド」(173頁)州の地下深くに造られた、
核兵器にも耐えられる軍司令部。
日常生活に深く浸透しているスマホ情報。
矛盾した情報も多く、それを信じるか信じないか、誰にも判断しにくい状況があります。
一方、昔ながらのラジオ情報をテディは聞いています。
「ずばり言おう。サブリナ・ギャロがティミー・ヤンシーによって殺されたのだとは、私は微塵たりとも信じていない。あの映像を信じられるわけがない。あんな事件が起こりうるとは到底思えない」(119頁)
ラジオ・キャスターはずばり言ってます。
テディも、同じように感じているのでしょうか。
大昔、ラジオ放送が始まったころ、
ドラマを流したら、
聞いた人たちが本気にしてしまって大騒ぎになったことがあったそうです。
スマホ情報とラジオ情報、どっちが信じられる?
このようなラジオ番組の声は、耳で聞くだけで文字にはなりません。
漫画小説では、うれしいことに <吹き出し> という便利な道具があります。
画にはならない難しい内容を、詳しく文字で書き記して何度でも読むことができます。
この漫画小説は何度も読み返していますが、読むたびに発見があり、興味が尽きません。
「あああ!」(65頁)
「キンコン」(91頁) ピンポン
「こんこん」(91頁) ドアをノックする音
「うわあああああ!」(116頁)
「BANG BANG」(202頁) バンバン。拳銃の発射音? 違う、酔っ払い男がドアを拳でたたく音
こんなにも<叫び声>や<騒音>があふれている漫画なのに、
音が消えると、よけいに無音を感じさせる漫画小説です。
人も突然消えると、よけいにその人の存在を感じる。
サブリナ、どこへ行っちゃったの?
《備考》
この漫画小説は、読者が自分なりにストーリーを解釈しながら、
信じる方向に、つじつまが合うように補っていく必要がありそうです。
登場人物の顔が、どれも似通っていて、いろいろなストーリーが可能です。
例えば、殺人事件として読んでみたらどうなるでしょう。
サブリナが消えた。この事実だけで、もしかして殺されたのでは?
と考えると、犯人は? 遺体は? 証拠は?
「サブリナが消えた」は、本書に付いている「帯」のキャッチコピーです。
この本のないようは、サスペンス小説の漫画ではないようです。
現代の情報社会の問題点を指摘した小説風の漫画ではないかと思います。
現代の情報社会には、<フェイク>情報が氾濫しています。
ただただデタラメな情報だけでなく、
巧妙に偽造、偽装され、権威付けられた情報もたくさん流れています。
最初は<アハハ>と笑うしかない幼稚な偽物情報でも、
時間が経つと偽物であることを忘れてしまい、
うっかりだまされてしまうことだってあります。
「リアルっぽい」(7頁)情報が多いので、
つい「フェイクだって忘れてた」(7頁)ことになりそうな、
今やそんなあやうい情報社会になっています。
噂がうわさを呼び、
どの情報を信じてよいのか分からなくなり、情報の海でおぼれそうになったり、
混乱して不安になり、どこか静かで安心できる場所へ逃げ出したくもなります。
この漫画小説は、アメリカの現代社会の生活状況をテーマに描かれています。
物語は、次のようなプロットが淡々と延々と続きます。
一番(4頁) 最初、姉サブリナの実家。妹サンドラが仕事帰りに寄って話をしていく。
二番(14頁) サブリナの恋人テディが、幼馴染の友人カルヴィンの家に泊めてもらう。
三番(24頁) カルヴィンの職場は、コロラド州シャイアン・マウンテン近くの軍の地下壕。
四番(34頁) カルヴィンの家の居間。テディとカルヴィンがビールとピザで夕食。
五番(40頁) 夕食中に、9.11同時多発テロから16周年のテレビ番組を観る。
六番(42頁) 再び、カルヴィンの家の居間でテディが酔いつぶれる。
七番(46頁) その夜の夢。テディ、悪夢を見て大声で叫ぶ。
八番(49頁) 次の日の朝。カルヴィンの妻ジャッキーと娘のシシとテレビ電話。
九番(52頁) カルヴィンのスマホに、妹サンドラから電話が入る。
「サブリナのバスの定期券」(52頁)が入った手紙が両親の家に届いた、
とテディに伝えて、との依頼。
サブリナは、どこかで生きているのか?
こんな調子のプロットが延々と、淡々と、はるかかなた205頁まで続きます。
そして、最後の頁、205頁には、
森の小道を一人で自転車を走らす女性の姿。
行方不明だったサブリナに似た顔の女性(男性?)。
自転車の後ろには小さなバッグが二つだけ。
気楽で自由なサイクリングの一人旅のように見えます。
ネット情報では、サブリナは殺されたのですから、
こんな田舎道を自転車で走っているわけがないか? わけわかんない。
妹サンドラと自転車旅行の話をする姉サブリナは、
はじめのうちは「行っといでよ!」と自分は乗り気ではない様子でした。
ところが、そのうち、
「よさげじゃない。 街から離れて、ネットからも離れて。」(10頁)
と変わっていきます。
サブリナのこころの中には、街から離れてみたい、ネットからも離れてみたい、
という潜在的な欲求があったようです。
行方不明となったサブリナは、
インターネット上では勝手に<殺された>ことにされてしまいました。
死体もないのに「サブリナ・ギャロ殺人事件」(123頁)なんて呼ばれる始末。
人をも殺す、恐ろしいネット社会です。
サブリナの妹や両親までが、サブリナは<死んだ>ものと思い込んでしまい、
あきらめて葬儀を出してしまう始末。
あきらめの良すぎる家族、世の中でしょう。言葉がありません。
「サブリナが消えた」本当の理由は?
最後の最後の「205頁」をご覧ください。ふむふむ。
繊細で複雑な心理は、シンプルな描線の漫画で描き、
抽象的、哲学的な内容は、吹き出しの文字で文学的に書いています。
電子メールの場面では、<文字だけ>の文学的なコマになっています。
この『サブリナ』は、グラフィック・ノベル。
漫画の良さと、文字の小説の良さが結合・コラボして、
独特の味わい深い、グラフィック・ノベルの世界が表出しています。
何を述べるというのでしょうか。
アメリカ社会にあふれる、
男女の問題、夫婦の問題、軍隊の問題、銃規制の問題、9.11テロの問題、
インターネット社会のフェイクニュース問題、ペット依存症の問題、老人問題などを、
この本は描いています。
どれもこれも解決の難しい問題ばかりです。
個人的には優しくて思いやりのある、いい人達ばかりのアメリカなのに。
なんでアメリカ社会にはこんなにたくさんの問題が絡み合ってこんがらがって、
解決困難になっているのでしょう。
「いったいどうすればいいの」(61頁)
本書タイトルの『サブリナ』は、主人公の女性「サブリナ・ギャロ」(32頁)の名前。
「27歳」(83頁)なのに落ち着いていて、おばさん風の女性。恋人は「テッド」。
口絵のイラストは、サブリナのようです。
左手の手のひらを(サブリナは左利き。13頁参照)カメラに向けて、
さえぎるようにしています。
ちょっとお、写すのやめて。 ネットに投稿したり絶対にしないでよね!
と言っているように感じました。
何の変哲もない、退屈そうなサブリナの日々の場面から、物語は始まります。
サブリナの仕事は、夜の仕事。誰もいない時間帯に建物の中を清掃する仕事らしい。
妹のサンドラと何気なく、自転車で回る五大湖の旅の話をしていたサブリナ。
ある日の朝、仕事から帰ってくる途中に行方不明になります。
行方不明になってから「ひと月」(本書の「帯」より)、
恋人「テディ・キング」(121頁)はすっかり腑抜け状態のようになってしまい、
コロラド州に住む、幼馴染の友人カルヴィン・ローベルを訪ねます。
カルヴィンの奥さんと娘は家を出て、フロリダに行ってしまっています。
軍人カルヴィンの勤務地は、「コロラド」(173頁)州の地下深くに造られた、
核兵器にも耐えられる軍司令部。
日常生活に深く浸透しているスマホ情報。
矛盾した情報も多く、それを信じるか信じないか、誰にも判断しにくい状況があります。
一方、昔ながらのラジオ情報をテディは聞いています。
「ずばり言おう。サブリナ・ギャロがティミー・ヤンシーによって殺されたのだとは、私は微塵たりとも信じていない。あの映像を信じられるわけがない。あんな事件が起こりうるとは到底思えない」(119頁)
ラジオ・キャスターはずばり言ってます。
テディも、同じように感じているのでしょうか。
大昔、ラジオ放送が始まったころ、
ドラマを流したら、
聞いた人たちが本気にしてしまって大騒ぎになったことがあったそうです。
スマホ情報とラジオ情報、どっちが信じられる?
このようなラジオ番組の声は、耳で聞くだけで文字にはなりません。
漫画小説では、うれしいことに <吹き出し> という便利な道具があります。
画にはならない難しい内容を、詳しく文字で書き記して何度でも読むことができます。
この漫画小説は何度も読み返していますが、読むたびに発見があり、興味が尽きません。
2020年9月26日に日本でレビュー済み
2017年、シカゴに住むテディは、同郷で今はコロラド州内の空軍基地に勤務するカルヴィンのもとへ転がり込む。テディは恋人のサブリナが誘拐されていて、憔悴しきっていた。行方知れずの日々が続いていたが、ある日、シカゴ在住の男から複数のメディアにVHSテープが送りつけられる……。
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優れた英語文学を顕彰する英国ブッカー賞に2018年、グラフィック・ノベルとして初めてノミネートされた作品です。ノミネートの報は、“マンガ”が重要な文学と同列に論じられた画期的な事件として話題になりました。
このノベルが焦点を当てるのは、サブリナ誘拐事件の背景や真相ではありません。サブリナ事件が、実際には起こっていないのではないか、実はそれは社会を震撼させるためだけに仕組まれた陰謀なのではないかと、一部のメディアが騒ぎ始め、その影響を強く受けたネットユーザーたちがその陰謀論を大真面目にどんどんと拡散していく様子が描かれます。一人の人間が社会で起こっていることのすべてに隅々まで通じることは所詮かないませんが、だからこそ人々の心に猜疑心が植え付けられ、歯止めがきかないほどに根を張り、心を覆い隠すほどに生い茂っていくさまが、決して絵空事ではないと感じさせます。
ラジオDJが吐きかける言論や、カルヴィンに直接メールを送り付けてくる一般人のその文面が、陰謀論にどっぷりと絡めとられた人物の心の漆黒の闇を思わせて気味が悪いことこのうえありません。
トランプ大統領が大声をあげながら既存のメディアをフェイクニュース報道機関だと口汚くこき下ろし、そのことに快哉を叫びながら大きな支持を表明する有権者が決して少なくないアメリカに暮らす作者なら、心底感じている疑問や恐怖の吐露の結果の作品であるはずです。
テディやカルヴィン、サブリナの妹のサンドラはそうしたネットの闇にからめとられ、前進も後退もままならない日々に閉じ込められていきます。登場人物の息苦しさを我がこととして重くのしかかってくる読書になるかもしれません。
それでも終わりのこない悪夢はないのかもしれません。閉塞状況から彼らがゆっくりとではあるけれども前へと足を踏み出すまでが描かれます。
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優れた英語文学を顕彰する英国ブッカー賞に2018年、グラフィック・ノベルとして初めてノミネートされた作品です。ノミネートの報は、“マンガ”が重要な文学と同列に論じられた画期的な事件として話題になりました。
このノベルが焦点を当てるのは、サブリナ誘拐事件の背景や真相ではありません。サブリナ事件が、実際には起こっていないのではないか、実はそれは社会を震撼させるためだけに仕組まれた陰謀なのではないかと、一部のメディアが騒ぎ始め、その影響を強く受けたネットユーザーたちがその陰謀論を大真面目にどんどんと拡散していく様子が描かれます。一人の人間が社会で起こっていることのすべてに隅々まで通じることは所詮かないませんが、だからこそ人々の心に猜疑心が植え付けられ、歯止めがきかないほどに根を張り、心を覆い隠すほどに生い茂っていくさまが、決して絵空事ではないと感じさせます。
ラジオDJが吐きかける言論や、カルヴィンに直接メールを送り付けてくる一般人のその文面が、陰謀論にどっぷりと絡めとられた人物の心の漆黒の闇を思わせて気味が悪いことこのうえありません。
トランプ大統領が大声をあげながら既存のメディアをフェイクニュース報道機関だと口汚くこき下ろし、そのことに快哉を叫びながら大きな支持を表明する有権者が決して少なくないアメリカに暮らす作者なら、心底感じている疑問や恐怖の吐露の結果の作品であるはずです。
テディやカルヴィン、サブリナの妹のサンドラはそうしたネットの闇にからめとられ、前進も後退もままならない日々に閉じ込められていきます。登場人物の息苦しさを我がこととして重くのしかかってくる読書になるかもしれません。
それでも終わりのこない悪夢はないのかもしれません。閉塞状況から彼らがゆっくりとではあるけれども前へと足を踏み出すまでが描かれます。
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2019年11月9日に日本でレビュー済み
不気味な作品である。表層的には現代のさまざまな病理的現象が組み込まれている。ネット社会の病理的な側面、マスコミの病理、新興宗教的なものの病理、職場での薄っぺらいつながりと手のひら返しの疎外、身勝手な愛情の病理、殺伐とした郊外と室内の光景、登場人物たちの総じての感情に乏しい表情はまるでムンクの「叫び」の直前のように静かで。まさに不気味だ。そして失踪事件自体の謎。
しかも読者は気が付くだろう。自分たちが作品を読んでいるときに、いつの間にか「善人」の目線で物事をみていて、それが最終部ちかくでそれとなく破壊されてしまうことを。われわれ読者自身も不気味な存在なのである。
おそらく読むほどに発見がある作品だ。
しかも読者は気が付くだろう。自分たちが作品を読んでいるときに、いつの間にか「善人」の目線で物事をみていて、それが最終部ちかくでそれとなく破壊されてしまうことを。われわれ読者自身も不気味な存在なのである。
おそらく読むほどに発見がある作品だ。
2021年8月2日に日本でレビュー済み
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同上