嘘―背中を刺す病(快感)に取りつかれたキム・フィルビーと友人ニコラス・エリオットの物語。フィルビーにとってイデオロギーは後付けにほかならない。反逆の独裁者を父に持ち、幼少時より嘘つきの傾向があり(独裁的父親への抵抗手段としてのウソ)、パブリックスクールでそれにみがきがかかり(猫かぶり養成学校としてのパブリックスクール)、未熟なイデオロギーの後ろ盾を得て完成形となった。読んでいてハナカマキリを連想した。-その魅力にひかれ近づいたものは破滅する。2度目の妻アイリーン、3度目の妻エレノアの人間不信の無惨な死、アメリカの友人アングルトンのスパイ人生の破滅等枚挙にいとまがない。ニコラス・エリオットに対する小馬鹿にしたようなソヴィエト秘密警察への報告を読むと究極のエゴイストといった感じがする。本人についてのハイライトは疑惑をうけての記者会見であり、嘘つきエンターテイナーとしての魅力を十二分に発揮した.
2度目の妻アイリーンとの痴話げんかはⅯÏ5の監視を欺くための偽装の可能性もあるのではないか。
フィルビーの亡命については、イギリス秘密情報部がていよくお払い箱にしたというに著者の見解に同感である。亡命後イデオロギー上の同僚マクリーンの妻メリンダを寝取ったあたり背信者の面目躍如という感じである。ソ連スパイの大物ウィリー・フィッシャー(アベル大佐)あたりが忌み嫌ったというのも無理のない話だと思う。ソヴィエトのコントローラーのユーリ・モディンの「彼はすべてを笑いものにし、中でも我々をバカにしていたのではないかという思い」はさもありなんという感じがする。
同じ2重スパイジョージ・ブレイクは、「誰の血も流していない。」と言い張ったというし、フィルビーも晩年のインタビューで「誰一人裏切ってなぞいない。」と語ったという。2重スパイになる人間は自己欺瞞もそうとうなもののようである。
フィルビーのひどい裏切りにあって自分を見失わなかったニコラス・エリオットはパブリックスクールの正の部分であり、裏切りを繰り編したキムフィルビーはその負の部分だったということになるだろうか。
それにしてもこの手のスパイの「イデオロギーゆえの他人を不幸にする権利があるようなふるまい」はおぞましいものだと思う。
結局フィルビーは「イギリスよ支配せよ」の裏焼き(共産主義版)でしかないのではないか。英国上流階級の最悪の欺瞞として。
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キム・フィルビー - かくも親密な裏切り 単行本 – 2015/5/8
ベン・マッキンタイアー
(著),
小林 朋則
(翻訳)
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冷戦下の世界を震撼させた英国史上最も悪名高い二重スパイ、そのソ連亡命までを、無二の親友との血まみれの友情物語を軸に描き出す!
- 本の長さ447ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2015/5/8
- ISBN-104120047199
- ISBN-13978-4120047190
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2015/5/8)
- 発売日 : 2015/5/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 447ページ
- ISBN-10 : 4120047199
- ISBN-13 : 978-4120047190
- Amazon 売れ筋ランキング: - 445,771位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,560位世界史 (本)
- - 78,960位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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2019年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
インテリジュンスとインテリジュンス史を理解するために必読の書です。本当のインテリジェンスがどういうものか、キム・フィルビーというスパイの人生を通して、最も明瞭に理解できます。
現在、我が国で出版されているインテリジュンス本では、インテリジュンス・サイクルなどというそれ程重要でない概念を重要視したり、或いはインテリジュンスを政治的決定をするための単なる情報収集と混同したりしているかのような言説が見られる。
真のインテリジュンスとは、国際政治における工作であり、欺瞞であり、作戦であり、戦いである。本書を読めばそのような真のインテリジュンスの断片を覗くことができる。インテリジュンスに関心のある方には、是非御一読をお勧めする一書である。
現在、我が国で出版されているインテリジュンス本では、インテリジュンス・サイクルなどというそれ程重要でない概念を重要視したり、或いはインテリジュンスを政治的決定をするための単なる情報収集と混同したりしているかのような言説が見られる。
真のインテリジュンスとは、国際政治における工作であり、欺瞞であり、作戦であり、戦いである。本書を読めばそのような真のインテリジュンスの断片を覗くことができる。インテリジュンスに関心のある方には、是非御一読をお勧めする一書である。
2020年2月9日に日本でレビュー済み
非常に面白く,一気に読了した。
キム・フィルビー事件について詳細を知らなかったので,その正体が露見しそうになる場面では,ページをめくるのがもどかしく思ったほどだ。
文中では,東西両陣営から多数の人物が登場する上,その人物がしばらく後になって再度出てくることも多いので,「この人誰だっけ?」と思うことが多々あったが,巻頭の多数の写真が理解の助けになった(ただし,写真の説明文で本文を読む前にその結末を知ってしまうことが多かったので,これから読む人は要注意)。
いつ現れるかもしれないソ連からの亡命者がその正体を明かせば,自分にミスがなくても,自身がソ連のスパイであると容易に露見する状況下で,何十年も二重生活を送るストレスはどれほどだろうと思った(極度の飲酒はその現れと思う)。
また,特権階級に属する者として,その贅沢をふんだんに味わいながら,その階級を敵とする思想に奉じる心境はどのようなものなのだろうとも思った。
スパイという特殊な世界の実録をかくも面白く描く筆者の力量に魅了された,最高の読書体験だった。おすすめ。
キム・フィルビー事件について詳細を知らなかったので,その正体が露見しそうになる場面では,ページをめくるのがもどかしく思ったほどだ。
文中では,東西両陣営から多数の人物が登場する上,その人物がしばらく後になって再度出てくることも多いので,「この人誰だっけ?」と思うことが多々あったが,巻頭の多数の写真が理解の助けになった(ただし,写真の説明文で本文を読む前にその結末を知ってしまうことが多かったので,これから読む人は要注意)。
いつ現れるかもしれないソ連からの亡命者がその正体を明かせば,自分にミスがなくても,自身がソ連のスパイであると容易に露見する状況下で,何十年も二重生活を送るストレスはどれほどだろうと思った(極度の飲酒はその現れと思う)。
また,特権階級に属する者として,その贅沢をふんだんに味わいながら,その階級を敵とする思想に奉じる心境はどのようなものなのだろうとも思った。
スパイという特殊な世界の実録をかくも面白く描く筆者の力量に魅了された,最高の読書体験だった。おすすめ。
2016年10月16日に日本でレビュー済み
最初は、ものすごく厚い本でなかなか読むのが難儀だと敬遠していたが、読み始めるとものすごく面白い。止まらない。一気に読了してしまう。
英国諜報部MI6に英国人でロシアのスパイがいる。それも共産主義ロシアが好きだからスパイになったのではなく、学生時代に単に共産主義に心酔したからというだけの理由で大物スパイに。現実の破綻しそうな官僚主義、独裁国家のロシアについては一顧だにせず、献身的にロシアに忠誠を誓いスパイを続ける。ロシアに対する不満、不信が全然無い。ケンブリッジ大学を出て完璧なロシアのスパイになり通したというこの倒錯した心理はどう説明できるのだろうか。
この人間が、諜報部の本当の近しい親友(親友はそう思っている)を長年裏切りながら高度の機密情報を集めロシアにどんどん送るとともに、MI5、6でどんどん出世していく。MI5、6の官僚主義、縦割り主義のため、フィルビーを見抜けない。この20年間の話はお笑い、道化話だ。フィルビーの立案した対ロシアへのスパイ作戦(スパイを侵入させる等)が悉く失敗するというのに、フィルビーは出世していくというのは、全くお笑いだ。見た目のフィルビーの高い能力に幻惑されている。官僚主義のお笑いだ。これが英国での話だから、なお面白い。紳士然とした国だが、どこか抜けている。
この本で残念なのが、パーティーや食事会でフィルビーがしゃべった猥談が全然記されていないということである。原書では書いてあるのかもしれないが。この猥談でフィルビーはすごくもてたと記されている。この倒錯したフィルビーの性格を理解するためにはこの内容はある程度紹介して欲しかった。なぜ、多くの人が誤魔化されたかの理解の一助になると思う。
面白い逸話として、ロシアに逃れたフィルビーが死去したとき、MI6がフィルビーは英国にダブルスパイとして貢献したと感謝の声明を出し、ロシアを攪乱させるという話だ。これが最後の決め台詞(オチ)だ。MI6の官僚主義のため、このオチが実行されなかったというのは本当に残念だった。ロシアはフィルビーが本当にロシアのためのスパイであったかどうか、決めかねていたはずだから、蛇の道はへび、「真実は小説より奇なり」で終焉したはずなのに。
フィルビーの性格が理解できない。家庭を破壊し、親友を裏切ることを一顧だにせず、パーティや食事会では花形で、大酒飲みで、それでボロを家族にも出さない。わからない、わからない。
英国諜報部MI6に英国人でロシアのスパイがいる。それも共産主義ロシアが好きだからスパイになったのではなく、学生時代に単に共産主義に心酔したからというだけの理由で大物スパイに。現実の破綻しそうな官僚主義、独裁国家のロシアについては一顧だにせず、献身的にロシアに忠誠を誓いスパイを続ける。ロシアに対する不満、不信が全然無い。ケンブリッジ大学を出て完璧なロシアのスパイになり通したというこの倒錯した心理はどう説明できるのだろうか。
この人間が、諜報部の本当の近しい親友(親友はそう思っている)を長年裏切りながら高度の機密情報を集めロシアにどんどん送るとともに、MI5、6でどんどん出世していく。MI5、6の官僚主義、縦割り主義のため、フィルビーを見抜けない。この20年間の話はお笑い、道化話だ。フィルビーの立案した対ロシアへのスパイ作戦(スパイを侵入させる等)が悉く失敗するというのに、フィルビーは出世していくというのは、全くお笑いだ。見た目のフィルビーの高い能力に幻惑されている。官僚主義のお笑いだ。これが英国での話だから、なお面白い。紳士然とした国だが、どこか抜けている。
この本で残念なのが、パーティーや食事会でフィルビーがしゃべった猥談が全然記されていないということである。原書では書いてあるのかもしれないが。この猥談でフィルビーはすごくもてたと記されている。この倒錯したフィルビーの性格を理解するためにはこの内容はある程度紹介して欲しかった。なぜ、多くの人が誤魔化されたかの理解の一助になると思う。
面白い逸話として、ロシアに逃れたフィルビーが死去したとき、MI6がフィルビーは英国にダブルスパイとして貢献したと感謝の声明を出し、ロシアを攪乱させるという話だ。これが最後の決め台詞(オチ)だ。MI6の官僚主義のため、このオチが実行されなかったというのは本当に残念だった。ロシアはフィルビーが本当にロシアのためのスパイであったかどうか、決めかねていたはずだから、蛇の道はへび、「真実は小説より奇なり」で終焉したはずなのに。
フィルビーの性格が理解できない。家庭を破壊し、親友を裏切ることを一顧だにせず、パーティや食事会では花形で、大酒飲みで、それでボロを家族にも出さない。わからない、わからない。
2015年5月17日に日本でレビュー済み
イギリス情報部MI6に所属し、いわゆる旧ソ連の「二重スパイ」として活躍したキム・フィルビーの評伝。副題にあるような、これほど見事裏切りはそうそうお目にかかれないであろう。小説ではなく、すべて事実である。フィルビーが旧ソ連のスパイであることは何度か発覚しそうになるが、フィルビーは幸運に恵まれ、何度も窮地を脱している。しかし、最後の最後になって旧ソ連のスパイであったことを認め、ソ連に亡命する。彼がイギリス情報部の情報を旧ソ連に流したことによって、どれくらいの西側諸国の人間が死に追いやられたのか、想像もつかないという。
著者いわく、従来のキム・フィルビーものと異なるのは、ニコラス・エリオットを中心にした個人的友情というプリズムを通して描いた新しいフィルビー像である。翻訳は平易で、日本語の主語述語が整理されていて非常に読みやすい。
著者いわく、従来のキム・フィルビーものと異なるのは、ニコラス・エリオットを中心にした個人的友情というプリズムを通して描いた新しいフィルビー像である。翻訳は平易で、日本語の主語述語が整理されていて非常に読みやすい。
2015年5月24日に日本でレビュー済み
こなれた翻訳。ただし、巻末のジョンルカレによるあとがき部分の訳は本文のとは異なる感じがした~少々わかりにくい。スパイが暗躍した土地としてとても重要なのがトルコであったことがよくわかる。今でもトルコはそういう国であり続けているのではなかろうか。巻頭にものすごい量の写真が載っていて、本書がファンタジーにもとづいたものではなく、ドキュメンタリーであることがよくわかる。それにしてもスパイのみなさんはいい男が多い。イアン・フレミングやグレアムグリーンも登場する。組織内の内部抗争(それも縦横)がむごい。フィルビーによって墓場におくられた工作員はどうやら無数。読み出したらとまらない、弾丸のような書。BBCでドラマ化されたような話もきいたが、ぜひぜひみてみたい。日本人の名前も、実はでてくる。失敗におわった破壊工作の依頼主としてだ!参考文献はオリジナルのものの一部(らしい)。人名件名索引があれば完璧。
2015年9月22日に日本でレビュー済み
親友だと信じていた人物、尊敬する指導教官として敬慕の対象だった人物が全く違う実像を現したとき、人はどう過去を解釈し、自らを納得させるのか。キム・フィルビーと同じ英国上流階級出身の親友にしてMI6の同僚ニコラス・エリオット、そして諜報後進国米国から派遣されキムを師と仰いだ、のちのCIA対情報部門責任者ジェームス・ジーザス・アングルトン、それぞれのキムとの友情とそののちの苦悩が巧みな文章で浮かび上がる。単なるスパイ物のノンフィクションではない奥行を持つ傑作。