『はじめに』によると、筆者は何年か「国境なき医師団」に寄付を続けた後、2016年から世界五ヶ国の「国境なき医師団」を取材しているのだそうだ。筆者によると、「国境なき医師団」のほぼ半数が非医療スタッフで占められており、テントなりコンテナなりを建てたり、衛生的な水や電気を確保したりしているのだそうだ。言われてみれば、たしかにこうした人たちがいなければ医師や看護師の活動もできないと気付かされるのだが、当時の筆者同様、私も全く知らなかった。筆者は、これらは「国境なき医師団」の仕事のほんの一部であり、本書では、何度言われてもびっくりするような、まるで知らない「国境なき医師団」を皆さんにお伝えしたいとしている。ちなみに、「国境なき医師団」を取材するようになったいきさつについて筆者は、自分だけでなく、多くの人が「国境なき医師団」の活動の内容を知らないことを知って、「自分が取材をしてなるべく多くの方に伝える」ことを思い立ったと語っている。
さて、そんな本書は、第一章で「国境なき医師団」という組織についての基本的知識を説明した後は、「国境なき医師団」の日本人団員7人へのインタビューと、筆者が取材した五ヶ国、ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダンの現地ルポで構成されている。
このうちインタビューについて、特に、医師で現「国境なき医師団」日本会長の、初任地においてそれまでは運び込まれた赤ちゃん全員が死亡していたものが、この医師が着任してからは250人のうち150人が生き残ったものの、「100人を看取ったと思うと僕は今でも頭が狂いそうになります」という話や、「僕はいつも「助けることができた」という達成感を持ち帰るよりも「助けられなかった」という絶望感に打ちひしがれて帰ってきます」「手が届かなかった人たちのことを考え続けてしまうんです。自分はもっとできたはずだと悔しくなる」という話、さらには、日本人で初めて活動責任者となった人のやはり初任地での、「僕が衝撃を受けたのは仲間たちの姿です。…自分の国にいたらもっと快適な生活がおくれるはずなのに、治安も住環境も給料も条件の悪いところにわざわざ来て…緊急人道援助が必要な人たちのために働いている。…仲間を誇りに思いました。会社では得たことのない感覚です。ビジネスは競争やノルマの世界だったんですね。MSFの仕事をずっと続けようと思った瞬間でした」という話には、心を打たれるものがあった。
また、残りの5人の話も、日本事務局で日本人の海外派遣スタッフの採用担当や寄付遺贈担当、あるいは実際に現地において非医療スタッフとして活動している人たちばかりなので、日本人として何らかの形で「国境なき医師団」の活動に参加したいと思っている方には参考になると思う。
五ヶ国の現地ルポでは、それぞれの国ごとに、さまざまな理由で緊急人道援助を必要としている人たちが大勢いること、そして、自分もそうした人たちを救う力になりたいというただ一念で、国籍、職歴、年齢もばらばらの人たちが、私利私欲を捨てて、あらゆる面で過酷な現地に飛び込んできて、それぞれに必要な緊急人道援助や、ときには継続的な援助に懸命に力を尽くしていることを紹介しつつ、そんな団員たちも、決して高邁な聖人君子ではなく、一緒に飲めば愚痴や文句も言い、悪態もつく、普通の人間であるとの団員の話も紹介している。たしかに、生身の人間である以上、当然、そうした人間らしい一面があるのも事実だろうが、こうした活動は絶対に生半可な気持ちでできるものではなく、私は、彼ら彼女らには本当に頭が下がる思いしかない。
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「国境なき医師団」になろう! (講談社現代新書) 新書 – 2019/9/18
いとう せいこう
(著)
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誰かのために、世界のために、何かしたい。
――でも、どうやって?
「国境なき医師団」で働くのは医師や看護師だけではない!
ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダンをめぐる現地ルポと
日本人スタッフへのインタビューで迫る、
「人道主義」の最前線。
* * *
MSFってどんな組織? どんな人が働いているの?
どこに派遣されるの? 危なくないの?
給料はもらえるの? …私でもなれるの?
知っているようで知らないMSFのリアルを、
稀代のクリエーターが徹底取材で明らかに!
* * *
[目次]
はじめに
第一章 「国境なき医師団」ってどんな組織?
第二章 MSF日本インタビュー1
アドミニストレーター
ロジスティシャン
人事部リクルートメントオフィサー
第三章 現地ルポ1
ハイチ
ギリシャ
フィリピン
第四章 MSF日本インタビュー2
国境なき医師団日本会長
活動責任者
ファンドレイジング部ディレクター+シニア・オフィサー
第五章 現地ルポ2
ウガンダ
南スーダン
おわりに
――でも、どうやって?
「国境なき医師団」で働くのは医師や看護師だけではない!
ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダンをめぐる現地ルポと
日本人スタッフへのインタビューで迫る、
「人道主義」の最前線。
* * *
MSFってどんな組織? どんな人が働いているの?
どこに派遣されるの? 危なくないの?
給料はもらえるの? …私でもなれるの?
知っているようで知らないMSFのリアルを、
稀代のクリエーターが徹底取材で明らかに!
* * *
[目次]
はじめに
第一章 「国境なき医師団」ってどんな組織?
第二章 MSF日本インタビュー1
アドミニストレーター
ロジスティシャン
人事部リクルートメントオフィサー
第三章 現地ルポ1
ハイチ
ギリシャ
フィリピン
第四章 MSF日本インタビュー2
国境なき医師団日本会長
活動責任者
ファンドレイジング部ディレクター+シニア・オフィサー
第五章 現地ルポ2
ウガンダ
南スーダン
おわりに
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2019/9/18
- 寸法10.6 x 1.2 x 17.4 cm
- ISBN-104065173159
- ISBN-13978-4065173152
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商品の説明
著者について
いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして活字・映像・音楽・舞台など多方面で活躍。『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞を受賞。『想像ラジオ』が三島賞・芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『小説禁止令に賛同する』『今夜、笑いの数を数えましょう』など多数。
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして活字・映像・音楽・舞台など多方面で活躍。『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞を受賞。『想像ラジオ』が三島賞・芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『小説禁止令に賛同する』『今夜、笑いの数を数えましょう』など多数。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2019/9/18)
- 発売日 : 2019/9/18
- 言語 : 日本語
- 新書 : 272ページ
- ISBN-10 : 4065173159
- ISBN-13 : 978-4065173152
- 寸法 : 10.6 x 1.2 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 387,199位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,802位講談社現代新書
- - 19,317位医学・薬学・看護学・歯科学
- - 48,615位社会・政治 (本)
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2019年9月22日に日本でレビュー済み
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2019年10月1日に日本でレビュー済み
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「二〇一六年から世界各国の『国境なき医師団』を取材して(p.3)」いる著者によるルポとインタビュー。
MSF=国境なき医師団関係の本は何冊か読んだが、それらがしばしば個人の、特定の地域でのミッションに関するものであるのに対して、本書はMSFの活動を俯瞰しており、著者は「いわばMSFの一員になるためのハウツー本(p.267)」と本書を表現する。それゆえ、著者は「より自分の感情に近い書きかたで(p.267)」書いたMSFに関する他著と違い、意識的にエモーショナルな描写や表現を排したのだろう。読んでいて涙するような部分は多くない(私の想像力の問題なのかもしれないが)。
いくつかの覚え書。
1 MSFの「主な活動内容には、『緊急医療援助』とともに『証言活動』(p.19)」がある。
2 MSFは「傷に絆創膏を貼る(p.136)」と喩えられる緊急医療援助だけでなく、「性暴力が多発している地域に入り、生殖や女性の健康に関する啓発活動(p.8)」をするなどの長期にわたる活動もしている。
3 MSFの「海外派遣スタッフのうち、医療スタッフが五三%、非医療スタッフが四七%。なんとノンメディカルの職種が約半数を占め(p.34)」る。
4 二〇一八年度、MSF全体の活動資金のなんと九五%が民間からの寄付(p.42)」。
5 日本でMSFの求人に応募する人は「近年は特に定年退職後の方、育児をひと段落された女性などが増えている(p.65)」。
MSF=国境なき医師団関係の本は何冊か読んだが、それらがしばしば個人の、特定の地域でのミッションに関するものであるのに対して、本書はMSFの活動を俯瞰しており、著者は「いわばMSFの一員になるためのハウツー本(p.267)」と本書を表現する。それゆえ、著者は「より自分の感情に近い書きかたで(p.267)」書いたMSFに関する他著と違い、意識的にエモーショナルな描写や表現を排したのだろう。読んでいて涙するような部分は多くない(私の想像力の問題なのかもしれないが)。
いくつかの覚え書。
1 MSFの「主な活動内容には、『緊急医療援助』とともに『証言活動』(p.19)」がある。
2 MSFは「傷に絆創膏を貼る(p.136)」と喩えられる緊急医療援助だけでなく、「性暴力が多発している地域に入り、生殖や女性の健康に関する啓発活動(p.8)」をするなどの長期にわたる活動もしている。
3 MSFの「海外派遣スタッフのうち、医療スタッフが五三%、非医療スタッフが四七%。なんとノンメディカルの職種が約半数を占め(p.34)」る。
4 二〇一八年度、MSF全体の活動資金のなんと九五%が民間からの寄付(p.42)」。
5 日本でMSFの求人に応募する人は「近年は特に定年退職後の方、育児をひと段落された女性などが増えている(p.65)」。
2021年1月17日に日本でレビュー済み
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彼らの仕事を支えるのに、様々な職種が関わっているのことを知りました。医師がいるだけでは人は救えません。
2019年12月20日に日本でレビュー済み
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以前に一時期「国境なき医師団」に寄付をしたこともありましたが、何となく活動があやふやで、うさんくさい感じがして、1年で寄付を止めました。しかし、今回本書を読んで、同団の詳細を知り、自分の考えを改めた次第です。特に本書で初めて知ったことは、その活動の半分以上が医師ではない人たちの活動によって支えられていたことです。本書がもっとたくさんの人たちに読まれれば、更なる非医療担当者による支援が集まり、著者が期待していた結果に到達できるのではないかと、陰ながら期待しています。
2020年1月15日に日本でレビュー済み
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国境なき医師団は、知っていましたが具体t気にどのような組織でどう運営されているかは、分かりませんでした。寄付を募るダイレクトメール以上に、心に響いてきました。いうとうせいこうさんの心意気も素晴らしいです。
2019年12月27日に日本でレビュー済み
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自分には縁遠い世界とばかり思っていましたが、意思の弱い自分も何かできる気になれました。
2019年9月24日に日本でレビュー済み
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私自身もこの本の出版に少し携わっているたので多少、客観的ではないかもしれい。そのことを差し引いても、海外5か国の医療活動の現場取材とその活動に従事する医療スタッフ(医師、看護師など)らへのインタビューのほか、普段あまり報じられることがない非医療系スタッフ(資金調達、財務、人事、ロジスティックなど)の活動内容も加えられ、とてもリアルな国際援助の実態がレポートされていると思う。基本的にいとうせいこう氏の主観を通じて書かれているのだが、読者に向けてつとめて客観的(ありのまま)に伝えたいという構成と文章になっていて説得力があった。南スーダンの難民キャプや女性への性虐待など非常にハードな状況をレポートしているので、書かれている内容はかなりシビアで重いのだが、それこそがまさに「人道主義の最前線」なのだろう。このジャンルに興味のある方には是非、お勧めしたい。
2021年5月4日に日本でレビュー済み
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「国境なき医師団を見に行く」の方をすでに読んでる人は
購入するならかなり中身がかぶってることを承知の上でないと
「あれっ?」てなります
購入するならかなり中身がかぶってることを承知の上でないと
「あれっ?」てなります