著者の長谷川氏は「まえがき」で、これまで自身がコラムや記事で、首相の突然の辞任表明や衆議院解散、消費税増税の延期など、内外の重大局面でいくつも将来の展開を予想し、的中させてきたのは、公開情報を丹念に調べ、権力者たちの立場に置いて考え、更に周辺情報を取材した結果であると述べている。
日本のマスコミには、根拠のない思い込みや自分の願望に基づいた解説や予想が氾濫している。権力者がどう考えるかよりも、自分が願っていることを優先しているから、トンチンカンなのである。
「次の展開を予想する」には、自分も権力者の立場に身を置いて、情勢を判断しなければならないのである。
長谷川氏は、2017年9月15日にいち早く衆院解散を予想し、2014年11月の衆院解散も10月に予想した。筋道立てて考え、サインを正しく読み解けば、「これは解散になる」と予想するのは可能だったという。
2017年10月の衆院選前、安倍首相が解散を決断したのは、支持率の回復だった。政治家が最も気にしているのは国民である。国民の意見を無視して政治ができるわけがない。日本の政治を動かしている本当の主役は国民である。だから政治家は国民の動向に細心の注意を払っている。政治記者たちはこの点を理解しているようでいて、実は分かっていない。だから、首相や大物政治家たちが関わる政治、政策、政局の動向を見誤ってしまうのである。
長谷川氏は、2008年9月の福田内閣総辞職や、2012年11月の野田政権の衆院解散も事前に予想した。政権与党の内部から目に見えない形で反乱が起き、政権運営が困難になったからである。
安倍首相が世論の動向を見て重大な決断をした例として、長谷川氏は憲法改正問題を挙げている。首相は2017年5月3日に、独自の憲法改正案を公表した。それは憲法九条の第一項と二項はそのままにして、新たに自衛隊を明文化する条文を追加するというものだった。自民党の草案は、九条の二を新設して「国防軍を保持する」というものだったが、それでは与党である公明党と何より肝心な国民の賛意が得られないと判断したからである。
憲法改正賛成派が反対派を上回るようになったとはいえ、「どちらともいえない・分からない」と答えた人たちは、いざ国民投票となったら、反対に回る可能性が高く、結果は「否決」となる可能性が高い。そうなれば、安倍政権は退陣に追い込まれ、この日本は二度と憲法改正ができなくなる可能性が高い。
憲法改正は「絶対に失敗は許されない政治課題」である。国民投票にかけるからには「絶対に間違いなく改正できる」というところまで、国民の間に賛成派を増やさねばならないのである。
政治にとって重要なのは、「実際にやれるかどうか」、そして「結果を残せるか」である。これは、第一次安倍政権で公務員制度の改革に取り組んだ結果、霞が関の総力を挙げた反転攻勢を受け、消えた年金問題による内閣支持率低下が引き金になり、第一次安倍政権は崩壊した。公務員制度改革は正しい政策だったが、官僚の抵抗により失敗した。この苦い経験から、安倍政権の中枢は「できないことはやらない。できることは少しずつやる」という教訓を得たのである。
国防軍提案の方が理想的とはいえ、自衛隊明記案の賛成が増えているのは間違いなく、実現性が増したのは確かだった。最初の挑戦で理想的な形に改められなくても、二度三度と改正を提起すればいい。憲法改正とはそういう話なのだ。
安倍政権を批判する勢力は野党と左派マスコミであり、なかでも左派マスコミは、めっきり衰えた野党以上に力を持っている。彼らは、客観中立や公平性といった建前をかなぐり捨てて、政権批判に血道を挙げている。以前はこれほど偏向してはいなかった。彼らの偏向が加速した根本原因は「野党が弱くなってしまったからだ」と、長谷川氏は見ている。野党の支持率は、全部合わせても10%程度に過ぎず、これではとても政権交代は望めず、そんな現実を前にして「オレたちが政権を打倒するしかない」と思い込んだのが、左派マスコミなのである。
いま野党で人気があるのは立憲民主党だが、長谷川氏は党代表の枝野幸男氏と党の憲法改正に対する姿勢に、違和感を抱くと述べている。党のホームページでは、「憲法改正、とりわけ九条改正に反対」と謳っているが、枝野氏はかつて九条改正に賛成の立場を表明していた。2013年の論文では、明確に集団的自衛権を容認しており、安倍首相が提案した改憲案よりはるかに過激である。
枝野氏は真正面から九条改正を唱えた改憲論者だったにもかかわらず、2017年の衆院選では「安保法制を前提とした憲法九条の改悪に反対」と主張している。枝野氏と立憲民主党にとっては「安倍政権に反対する」のが最重要課題であるからだろう。彼らにとって「安倍政権打倒」が最優先事項なのである。
憲法改正のような国の基本を決める重要案件でさえも、政権打倒のためなら簡単に態度を翻す。こういう変節を目の当たりにすると、彼らの信念はその程度なのかと判断せざるを得ない。これが彼らを信用できない理由の一点目だと長谷川氏は述べている。
そのうえ、彼らはホームページで「立憲主義」を「政治権力が独裁化され、一部の人達が恣意的に支配することを抑制する立場」と説明している。そうだとすると、立憲民主党は決して幅広い国民が支持する政党になり得ないだろう。多くの国民が「憲法は権力を抑制するもの」と考えるとは限らないからだ。
また「権力抑制が立憲主義」と主張するのであれば、彼らは権力に対峙してこそ存在意義がある。それなら、彼らは権力奪取を目指すことは出来ない。「自分たちは政権の抵抗勢力であり、それ以上ではありません」と主張しているからである。
経済政策を見ても、格差是正どころか悪平等を加速させるものや、経済成長をあきらめるものだったりする。
かつて55年体制の下で、社会党は自民党政権に対する抵抗勢力として存在意義を見出したが、政権を担うほどの政策構想力と実行力を示せず、消滅した。立憲民主党もやがて社会党と同じ運命をたどっていくのではないか。こうした権力者になれない人たちの「絶対法則」も確実に存在すると長谷川氏は述べている。
安倍政権が長期政権である理由が理解できた。保守陣営から見れば、煮え切らない態度や物足りないことも、敵を作らないために妥協した結果なのだ。
消費税を増税すればデフレに逆戻りすると分かっていても、日本の最強官庁である財務省を敵に回せば、大反抗に遭って政権が潰されかねない。だから「増税しません」と言わず、「次は増税します」と言い続けているのだという。無用な戦いはギリギリまで避けて、最後の瞬間に仕掛けるのも、「権力者の絶対法則」なのである。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥968¥968 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥968¥968 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥13¥13 税込
配送料 ¥240 6月10日-12日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】 販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
¥13¥13 税込
配送料 ¥240 6月10日-12日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
明日の日本を予測する技術 「権力者の絶対法則」を知ると未来が見える! (講談社+α新書) 新書 – 2018/12/13
長谷川 幸洋
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥968","priceAmount":968.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"968","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"vnQVY1stjFScw0RLtDsrIW9HyUFh8SERVknoFbfFzV3IT4iet2xWGTN94bOJpH7S87Bwkz6OOmm4N2ZmqZNUQWKOVVgd4zKoMEs5CJFLVXiCFpTv22sQtYu4z0fv0H54dC4BFhy3oMc%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥13","priceAmount":13.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"13","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"vnQVY1stjFScw0RLtDsrIW9HyUFh8SERCvs2S9YKLuv%2BlqFT6%2FNgsUmJcgwegBCJIszinDNob18Rn%2BvIGPWlzcM6jRoQhTqZRQ8iKqUKUlX%2BiO%2FHEuTKZ0%2BQBSW0VOZQK177QNMGm%2BZD8tdDH5JXLBFdrEn53B1cxuj4AmlzLMkS%2FLawtUXqzw%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
ビジネスに、投資に、就職に! 「権力者の絶対法則」を知れば、未来が見える!! 権力を握る者は、日本であれ世界のどこかの国であれ、物事の考え方や判断、そして行動に、「絶対法則」のようなパターンがある。著者は日本の政治や世界の情勢を眺めるうちに、それを確信した。 本邦初公開! 「明日を予測する技術」は、政治、経済、国際関係だけでなく、会社や組織の身近な人間関係をさばいていくうえでも役立つ優れもの!
ビジネスに、投資に、就職に! 「権力者の絶対法則」を知れば、未来が見える!!
権力を握る者は、日本であれ世界のどこかの国であれ、物事の考え方や判断、そして行動に、「絶対法則」のようなパターンがある。著者は日本の政治や世界の情勢を眺めるうちに、それを確信した。
そして、首相の突然の辞任表明や衆議院解散、消費税増税の延期、あるいはトランプ大統領による米朝首脳会談中止の決断など、内外の重大局面で将来の展開を予想し、的中させてきた。 それは、当事者たちから事前に情報を教えてもらっていたからではない。 公開情報を丹念に調べ、権力者本人たちの立場に身を置いて考え、さらに周辺情報を取材した結果である。
本邦初公開! 「明日を予測する技術」は、政治、経済、国際関係だけでなく、会社や組織の身近な人間関係をさばいていくうえでも役立つ優れもの!!
ビジネスに、投資に、就職に! 「権力者の絶対法則」を知れば、未来が見える!!
権力を握る者は、日本であれ世界のどこかの国であれ、物事の考え方や判断、そして行動に、「絶対法則」のようなパターンがある。著者は日本の政治や世界の情勢を眺めるうちに、それを確信した。
そして、首相の突然の辞任表明や衆議院解散、消費税増税の延期、あるいはトランプ大統領による米朝首脳会談中止の決断など、内外の重大局面で将来の展開を予想し、的中させてきた。 それは、当事者たちから事前に情報を教えてもらっていたからではない。 公開情報を丹念に調べ、権力者本人たちの立場に身を置いて考え、さらに周辺情報を取材した結果である。
本邦初公開! 「明日を予測する技術」は、政治、経済、国際関係だけでなく、会社や組織の身近な人間関係をさばいていくうえでも役立つ優れもの!!
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2018/12/13
- 寸法11.8 x 1.6 x 17.4 cm
- ISBN-10406514101X
- ISBN-13978-4065141014
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 明日の日本を予測する技術 「権力者の絶対法則」を知ると未来が見える! (講談社+α新書)
¥968¥968
最短で6月8日 土曜日のお届け予定です
残り2点(入荷予定あり)
¥1,400¥1,400
最短で6月8日 土曜日のお届け予定です
残り1点 ご注文はお早めに
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
長谷川 幸洋
ジャーナリスト。1953年、千葉県に生まれる。慶応義塾大学経済学部卒、1977年に中日新聞社入社、2018年3月、東京新聞・中日新聞論説委員を最後に退社。ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。規制改革推進会議委員。『日本国の正体 政治家・官僚・メディア---本当の権力者は誰か』(講談社)で第18回山本七平賞。『2020年新聞は生き残れるか』『官僚との死闘700日』(以上、講談社)、「ケント&幸洋の大放言!」(ビジネス社)など著書多数。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BS朝日「激論!クロスファイア」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」など、テレビ・ラジオ出演多数。
ジャーナリスト。1953年、千葉県に生まれる。慶応義塾大学経済学部卒、1977年に中日新聞社入社、2018年3月、東京新聞・中日新聞論説委員を最後に退社。ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。規制改革推進会議委員。『日本国の正体 政治家・官僚・メディア---本当の権力者は誰か』(講談社)で第18回山本七平賞。『2020年新聞は生き残れるか』『官僚との死闘700日』(以上、講談社)、「ケント&幸洋の大放言!」(ビジネス社)など著書多数。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BS朝日「激論!クロスファイア」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」など、テレビ・ラジオ出演多数。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2018/12/13)
- 発売日 : 2018/12/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 406514101X
- ISBN-13 : 978-4065141014
- 寸法 : 11.8 x 1.6 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 546,875位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 656位講談社+α新書
- - 68,835位社会・政治 (本)
- - 92,327位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年2月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今日も何かが起こってる。意味がわからず起こってる。素通りするのもいいけれど、もしかしたら、将来自分の身に降りかかるかも。
本書は今、起こっている国内の政治、国際関係と、これからの予測が書かれてある。
ここに書かれてある事は、新聞やテレビでは見られない事だろう。改めて思ったのが、世の中、こんなに複雑に目まぐるしく動いている。
ニュースにするスピードも大事だが、「何がどう起きている。そして、権力者達は何を考えているか」も大事だと気づかされた。
会見で、ニヤリと笑ったら要注意。
本書は今、起こっている国内の政治、国際関係と、これからの予測が書かれてある。
ここに書かれてある事は、新聞やテレビでは見られない事だろう。改めて思ったのが、世の中、こんなに複雑に目まぐるしく動いている。
ニュースにするスピードも大事だが、「何がどう起きている。そして、権力者達は何を考えているか」も大事だと気づかされた。
会見で、ニヤリと笑ったら要注意。
2018年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本人が終章で「東京新聞という極端に左に傾いた新聞社に勤めながら、保守中道路線を貫いた」(p234)と述べているように、異色の記者経歴を持つ著者の政治・国際情勢分析本である。
「まえがき」では、「明日を予測する技術」を初公開する、と書かれているが、最後まで読んだ感想を言えば、予測する「テクニック」よりも分析した「結果」の方が文章量としては多いし、内容も参考になった、というのが本音だ。
誤解を招くと困るので説明すると、著者の述べる「予測する技術」とは、突き詰めると「先入観を持たずに『事実』を見て、その裏にある『真実』を理解することが重要だ」という一文で表現できてしまうのではないか、と感じた。
具体的な例を出すと第一章で、著者は2014年と2017年の衆議院解散の予想を的中させたが、この根拠になったのは「菅官房長官のGDP速報値に関する発言」と「新聞社の世論調査結果」という、どちらも公開情報である。
政治部の記者やジャーナリストの多くは、官邸や党幹部などの聞き込み取材には熱心だが、こうした目の前の事実関係を冷静に検証し、真実に迫るスタンスを見失っている、と指摘している。
これはまさに「事実」から「真実」を導き出せばいいということだろう。
以上を前提に読み進めると、政治、国際情勢などの著者の「分析」は、説得力があって面白いのは確かだ。
特になるほどと合点がいったのが、自民党政権は経済の「安定成長」を目指しているのに対して、野党は「格差是正」が目的だという指摘(p68)。
著者は経済規模をピザに例えているが、「ピザが大きくなれば、切り分ける部分も大きくなる」と捉えるか、「ピザが大きくなっても、切り分け部分が大きくならない」と考えるかの違いであり、発想の原点が異なるので与野党の溝は埋まらないのが道理だろう。
とは言え、「ピザを大きくしたうえで、切り分け比率を変更する」という考えもあるのではないかと思うが。
また、左派のマスコミが政権批判に血道を上げているのは「野党が弱くなってしまったから」(p86)という指摘も参考になる。
その理由は、野党の支持率が全部合わせても10%程度ではとても政権交代が望めないので、その現実を前にして「オレたちが政権を打倒するしかない」と思い込んだのが左派マスコミだという分析だ。
日頃から、森友、加計、公文書改ざんなどで政権が追及されても、支持率の下落が一時的な現象にとどまっているのだから、マスコミは「何故支持率が底堅いのかを冷静に検証する必要があるのではないか」と感じていたのだが、政権打倒が左派マスコミの目的であればこれまでの偏った報道姿勢も納得ができる。
終章も含めて全九章からなるが、後半は米国、朝鮮半島、中国などの海外情勢の分析で、こちらも事実に基づいた分析と解説は分かりやすく参考になる。
今注目の米中貿易戦争の行方については、「ハイテク技術が軍事に直結しているので米国は絶対に退かない。現在はこれから本格化する米中『新冷戦』の序章に過ぎない」(p235)との指摘は、今後の日本への影響を考えるとかなり厳しい予想だ。
「日本は米国との同盟を堅持しつつ、冷静で複眼志向の外交戦を戦う覚悟が問われている」(p251)のは間違いない。
【追記】
第三章で、日本の財政赤字問題は、日銀の資産を含めた「統合政府」としてみれば問題はない、と元大蔵官僚の高橋洋一氏の主張を支持している。
個人的には「日銀の負債は考慮しなくていいのか」が疑問だったのだが、著者は「負債勘定にある日銀券も当座預金も返す必要のない無利子・無期限の借金だから心配はない」としている。
私は財務に詳しい訳ではないのでこれは個人的な見方だが、返す必要のない借金であるなら「負債」ではなく「資本」に組み入れるべき勘定項目のような気もするのだが。
「まえがき」では、「明日を予測する技術」を初公開する、と書かれているが、最後まで読んだ感想を言えば、予測する「テクニック」よりも分析した「結果」の方が文章量としては多いし、内容も参考になった、というのが本音だ。
誤解を招くと困るので説明すると、著者の述べる「予測する技術」とは、突き詰めると「先入観を持たずに『事実』を見て、その裏にある『真実』を理解することが重要だ」という一文で表現できてしまうのではないか、と感じた。
具体的な例を出すと第一章で、著者は2014年と2017年の衆議院解散の予想を的中させたが、この根拠になったのは「菅官房長官のGDP速報値に関する発言」と「新聞社の世論調査結果」という、どちらも公開情報である。
政治部の記者やジャーナリストの多くは、官邸や党幹部などの聞き込み取材には熱心だが、こうした目の前の事実関係を冷静に検証し、真実に迫るスタンスを見失っている、と指摘している。
これはまさに「事実」から「真実」を導き出せばいいということだろう。
以上を前提に読み進めると、政治、国際情勢などの著者の「分析」は、説得力があって面白いのは確かだ。
特になるほどと合点がいったのが、自民党政権は経済の「安定成長」を目指しているのに対して、野党は「格差是正」が目的だという指摘(p68)。
著者は経済規模をピザに例えているが、「ピザが大きくなれば、切り分ける部分も大きくなる」と捉えるか、「ピザが大きくなっても、切り分け部分が大きくならない」と考えるかの違いであり、発想の原点が異なるので与野党の溝は埋まらないのが道理だろう。
とは言え、「ピザを大きくしたうえで、切り分け比率を変更する」という考えもあるのではないかと思うが。
また、左派のマスコミが政権批判に血道を上げているのは「野党が弱くなってしまったから」(p86)という指摘も参考になる。
その理由は、野党の支持率が全部合わせても10%程度ではとても政権交代が望めないので、その現実を前にして「オレたちが政権を打倒するしかない」と思い込んだのが左派マスコミだという分析だ。
日頃から、森友、加計、公文書改ざんなどで政権が追及されても、支持率の下落が一時的な現象にとどまっているのだから、マスコミは「何故支持率が底堅いのかを冷静に検証する必要があるのではないか」と感じていたのだが、政権打倒が左派マスコミの目的であればこれまでの偏った報道姿勢も納得ができる。
終章も含めて全九章からなるが、後半は米国、朝鮮半島、中国などの海外情勢の分析で、こちらも事実に基づいた分析と解説は分かりやすく参考になる。
今注目の米中貿易戦争の行方については、「ハイテク技術が軍事に直結しているので米国は絶対に退かない。現在はこれから本格化する米中『新冷戦』の序章に過ぎない」(p235)との指摘は、今後の日本への影響を考えるとかなり厳しい予想だ。
「日本は米国との同盟を堅持しつつ、冷静で複眼志向の外交戦を戦う覚悟が問われている」(p251)のは間違いない。
【追記】
第三章で、日本の財政赤字問題は、日銀の資産を含めた「統合政府」としてみれば問題はない、と元大蔵官僚の高橋洋一氏の主張を支持している。
個人的には「日銀の負債は考慮しなくていいのか」が疑問だったのだが、著者は「負債勘定にある日銀券も当座預金も返す必要のない無利子・無期限の借金だから心配はない」としている。
私は財務に詳しい訳ではないのでこれは個人的な見方だが、返す必要のない借金であるなら「負債」ではなく「資本」に組み入れるべき勘定項目のような気もするのだが。
2019年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昨年聴いた長谷川氏の講演会はとても分かりやすく印象に残るものでした。この著作も同様で、是非とも多くの人に読んでほしい本です。