この作品は、主人公である伊勢新九郎が中々登場しない。
室町の民衆や彼らの思考を説明しながら、無私の新九郎が身を立てる過程が描かれ、あまりこの時代に詳しくない私だが分かりやすく楽しめた。
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箱根の坂 上 (講談社文庫 し 1-20) 文庫 – 1987/4/1
司馬 遼太郎
(著)
- 本の長さ332ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1987/4/1
- ISBN-104061839624
- ISBN-13978-4061839625
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1987/4/1)
- 発売日 : 1987/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 332ページ
- ISBN-10 : 4061839624
- ISBN-13 : 978-4061839625
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,180,968位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年5月31日に日本でレビュー済み
物語は、一見無関係に見える程長い序章を連ねて、山城南郊の田原荘から始まり、京の今出川、幕府の政所執事伊勢伊勢守貞親の邸宅へ向かっていく。その展開は、さながら陽光が射しこめる様に、山深い山村から広々とした都大路へ空が開けていく様に感じられ、その道すがら語られる、応仁元年(1467)春の退廃しきった室町の世相が、我々に当時の空気を肌に感じさせ、山中小次郎と、荒木兵庫助の目線に落ち着かされていく。そして長い序章の末、目線の先に「作りの鞍」を彫る伊勢新九郎盛時(後の北條早雲)が現れる。極めて優れた物語の幕開けである。
毎度ながら、大変教えられる事の多い「余談」が好ましい。鳥辺山、一遍と時宗、行儀と殿中作法、小笠原氏と伊勢氏、大坪入道道禅、作りの鞍、今様、足軽の勃興とその代表者骨皮道賢。全てが旧社会の秩序を破壊し、戦国乱世の幕開けを予感させる事共である。
この上巻は、一見北條早雲の物語の歴史的な進行には無関係な冗長に見えよう。しかし、応仁の大乱前夜の此の時代こそ、若き日の伊勢新九郎の人格形成に大きな影響を及ぼした、旧世界の権威が破壊され、新時代の息吹を感じさせる時代であった。同じ人間でありながら天地の様な開きを持つ貴賤の人々。世に勃興しつつあった新階層、足軽の凄まじさと、実力第一の世界へと変貌を遂げ、戦国乱世へ大きくうねって行く時代性。その中にあっても、今様や歌で心を通わす男女の高雅な機微などが色鮮やかに描き出されている。それら凡ての中を泳ぐように生き、時代の流れを受け止めている伊勢新九郎の涼やかさを巧みに語り、折々に触れられる京洛の情勢は、我々を室町中期の戦乱の京に立っているかの様に想像させる。他にも、同じ時宗でありながら、一遍の弟子達が師の思想を歪め、同門同志で対立していく有り様など、どうしようもない濁世でありながら、同時に何故か人々の底抜けな活気と喧騒を感じさせ、個性的な登場人物達、伊勢新九郎、千萱(後の今川義忠室北川殿)、足利義視、今川義忠、骨皮道賢といった面々を艶やかに表現している。
そして、今川義忠の討死の悲報が届き、早雲は千萱を手助けするために駿河への下向を決意し、後世戦国大名の第一号と呼ばれる北條早雲の覇業が幕を開ける(中巻へ続く)。
毎度ながら、大変教えられる事の多い「余談」が好ましい。鳥辺山、一遍と時宗、行儀と殿中作法、小笠原氏と伊勢氏、大坪入道道禅、作りの鞍、今様、足軽の勃興とその代表者骨皮道賢。全てが旧社会の秩序を破壊し、戦国乱世の幕開けを予感させる事共である。
この上巻は、一見北條早雲の物語の歴史的な進行には無関係な冗長に見えよう。しかし、応仁の大乱前夜の此の時代こそ、若き日の伊勢新九郎の人格形成に大きな影響を及ぼした、旧世界の権威が破壊され、新時代の息吹を感じさせる時代であった。同じ人間でありながら天地の様な開きを持つ貴賤の人々。世に勃興しつつあった新階層、足軽の凄まじさと、実力第一の世界へと変貌を遂げ、戦国乱世へ大きくうねって行く時代性。その中にあっても、今様や歌で心を通わす男女の高雅な機微などが色鮮やかに描き出されている。それら凡ての中を泳ぐように生き、時代の流れを受け止めている伊勢新九郎の涼やかさを巧みに語り、折々に触れられる京洛の情勢は、我々を室町中期の戦乱の京に立っているかの様に想像させる。他にも、同じ時宗でありながら、一遍の弟子達が師の思想を歪め、同門同志で対立していく有り様など、どうしようもない濁世でありながら、同時に何故か人々の底抜けな活気と喧騒を感じさせ、個性的な登場人物達、伊勢新九郎、千萱(後の今川義忠室北川殿)、足利義視、今川義忠、骨皮道賢といった面々を艶やかに表現している。
そして、今川義忠の討死の悲報が届き、早雲は千萱を手助けするために駿河への下向を決意し、後世戦国大名の第一号と呼ばれる北條早雲の覇業が幕を開ける(中巻へ続く)。
2011年8月4日に日本でレビュー済み
司馬遼太郎の本は高校生のころ本当によく読んだ。私はその中でも本作が好きである。
伊勢新九郎(北条早雲)という素性定かでない主人公に、まるで史実のような素性をもたせ。
伊勢新九郎が私の前に現れ会話したようにすら感じさせる。ほとんどフィクションなのに!!
今読み返しても、室町時代という虚飾の本質を描きあげ、虚飾を張りあって本質を失う支配者階級と余剰生産が蓄積を始めいつの間に時代の主役になっていく農民階級。
まさしく誰の意志でもないのに時代が変わっていくあり様。
この室町という時代を感じ社会の本質を見るためには、新九郎のような自己主張をあまり感じないいや虚飾の無い男である必要があるなと妙に納得します。
作者は、秀吉・家康をはじめとしていろいろ大きな題材にも取り組んでいますが、このようなちょっと主流から外れた作品こそ、作者の時代を見る目にある反骨心とひねくれたリアリストとしての真骨頂がある気がします。
われわれの生きる時代はどうでしょう、本質はなんでしょう、今はいろんな事に惑わされる時代です。人間見たいことしか見えない動物です。ありのままを見ることができる。そういう人はそれだけで貴重なのかも知れません。
伊勢新九郎(北条早雲)という素性定かでない主人公に、まるで史実のような素性をもたせ。
伊勢新九郎が私の前に現れ会話したようにすら感じさせる。ほとんどフィクションなのに!!
今読み返しても、室町時代という虚飾の本質を描きあげ、虚飾を張りあって本質を失う支配者階級と余剰生産が蓄積を始めいつの間に時代の主役になっていく農民階級。
まさしく誰の意志でもないのに時代が変わっていくあり様。
この室町という時代を感じ社会の本質を見るためには、新九郎のような自己主張をあまり感じないいや虚飾の無い男である必要があるなと妙に納得します。
作者は、秀吉・家康をはじめとしていろいろ大きな題材にも取り組んでいますが、このようなちょっと主流から外れた作品こそ、作者の時代を見る目にある反骨心とひねくれたリアリストとしての真骨頂がある気がします。
われわれの生きる時代はどうでしょう、本質はなんでしょう、今はいろんな事に惑わされる時代です。人間見たいことしか見えない動物です。ありのままを見ることができる。そういう人はそれだけで貴重なのかも知れません。
2003年8月12日に日本でレビュー済み
室町から戦国への時代の移り変わりを、北条早雲の人生を中心に描いた上中下3巻の大作。
歴史教科書では往々にして「応仁の乱により室町幕府の体制が弱体化し下剋上が始まった」といった程度で片付けられてしまうこの時代ですが、本作では侍、農民、僧、町人などさまざまな身分の人々の生活や文化が詳細に描かれているため、社会全体で既存の価値観が崩れ、時代が移り変わってゆくのを感じ取ることができます。
鎌倉から300年近く続いた守護地頭体制の終焉は、日本史上でも大規模な価値観の変革だったと思います。やはり司馬遼太郎が描く時代の移り変わりは最高におもしろく、また自分が生きていく上での参考にもなります。
現代に生きる自分達も時代の流れを敏感に感じ取り、そして迅速にその変化に対応!して新しい時代を切り拓くことが必要だと実感しました。
歴史教科書では往々にして「応仁の乱により室町幕府の体制が弱体化し下剋上が始まった」といった程度で片付けられてしまうこの時代ですが、本作では侍、農民、僧、町人などさまざまな身分の人々の生活や文化が詳細に描かれているため、社会全体で既存の価値観が崩れ、時代が移り変わってゆくのを感じ取ることができます。
鎌倉から300年近く続いた守護地頭体制の終焉は、日本史上でも大規模な価値観の変革だったと思います。やはり司馬遼太郎が描く時代の移り変わりは最高におもしろく、また自分が生きていく上での参考にもなります。
現代に生きる自分達も時代の流れを敏感に感じ取り、そして迅速にその変化に対応!して新しい時代を切り拓くことが必要だと実感しました。
2011年11月29日に日本でレビュー済み
いわゆる戦国時代小説しか読まなかった小生において初めてその戦国時代の初めともいうべき北条早雲を読んだ。
長年の思いを果たした感じだ。とにかく作品の構成がすばらしい。
常に鎌倉幕府、室町幕府初期などの動静を解説しながら応仁以降の早雲を見事に物語っている。
ところどころに古歌などを盛り込み、戦国の始まりとはいえなかなかの風情が佇む。
信長以降のあわただしい戦国も面白いが、ある意味のんびりとした作品も興味湧く。
お勧めの作品である。
一般文学通算748作品目の感想。通算1120冊目の作品。2011/11/26
長年の思いを果たした感じだ。とにかく作品の構成がすばらしい。
常に鎌倉幕府、室町幕府初期などの動静を解説しながら応仁以降の早雲を見事に物語っている。
ところどころに古歌などを盛り込み、戦国の始まりとはいえなかなかの風情が佇む。
信長以降のあわただしい戦国も面白いが、ある意味のんびりとした作品も興味湧く。
お勧めの作品である。
一般文学通算748作品目の感想。通算1120冊目の作品。2011/11/26
2002年9月25日に日本でレビュー済み
室町後期、応仁の乱の頃、中世の頃の時代を長い時間をかけて描いており、武家から貴族文化に気分だけが移行し、農民の台頭を感知せぬままにいた足利は滅び、その力を背景とした戦国大名が勃興した。
この時代の必然性をゆっくりと解き明かしている。中世の気分を表すのは、難しく、雰囲気を描き出すことに苦心している。
司馬作品では「妖怪」を読めば助けになると思う。
この時代の必然性をゆっくりと解き明かしている。中世の気分を表すのは、難しく、雰囲気を描き出すことに苦心している。
司馬作品では「妖怪」を読めば助けになると思う。
2004年4月17日に日本でレビュー済み
戦国の幕を切って落とした張本人「元祖戦国大名」早雲の物語。京から流れてきた「旅の者」早雲が、如何にして関東の覇者と成り得たか。鎌倉以来の守護・地頭による地方政治のあり方を根底から覆し、しかも地元国人・領民から多大な信頼を得た、その常識破りの行政手法とは。
早雲個人そのものに興味のある方はもちろん、鎌倉幕府消滅以降、混迷の続く関東の様子を知りたい方にも、お奨めの1冊です。
早雲個人そのものに興味のある方はもちろん、鎌倉幕府消滅以降、混迷の続く関東の様子を知りたい方にも、お奨めの1冊です。
2002年3月18日に日本でレビュー済み
一般に小田原城をだまし討ちにした下克上の代名詞のように言われる北条早雲の生涯を室町時代の古い価値観の時代から戦国時代の新しい価値観の時代への推移と重ねて描いている。
またなぜ関東に何の地盤も持たなかった早雲が大名に成り得たのか。
なぜ多くの名家が新興勢力である早雲に滅ぼされたのかを徹底した資料収集から解き明かして行き、その後の北条家当主達が戦国時代では例の無い程民政に力を入れたのかを理解させてくれる。
またなぜ関東に何の地盤も持たなかった早雲が大名に成り得たのか。
なぜ多くの名家が新興勢力である早雲に滅ぼされたのかを徹底した資料収集から解き明かして行き、その後の北条家当主達が戦国時代では例の無い程民政に力を入れたのかを理解させてくれる。