漱石と寺田の師弟関係は深く、漱石「猫」の寒月君、「三四郎」の物理学教師の野々宮は何れも寺田をモデルとしている程。このため、物理学者である寺田は文学にも造詣が深く、「科学と文学」、を語るにこれ程相応しい人物は居ない。
本書は四部構成であるが、「科学と文学」の前の第一部で「芸術としての映画」、第二部で「連句」を語っている点が新鮮かつユニークである。映画を主題の「分析→選択→編成」という過程に別けて科学的分析をしている点が寺田らしい。寺田は映画を総合芸術と捉えているのだ。映画のモンタージュ効果と似ていると考えているのは俳諧・連句である。特に、連句中の繋がった句をRiemann面と考えている発想には驚かされる。また、音楽と連句の類似性(音・言葉の編成)、連句が惹起する聯想など、話題の拡がりが尽きない。続いて、「科学と文学 Ⅰ」。まず、両者の目的を<創作>として、科学者と芸術家との発想の類似性を優しく語る。更に、文学の中の科学的要素について述べた後で、自身の経験に照らして、科学者の官能性を語って眩しい。また、文学者の代表として西鶴に関して深く考察している点も興味深い。続いて、天文と俳句、という話題で、天文学と俳句の季語の関連を説明した後で、芭蕉の俳句を深く考察している辺りはまさに寺田の面目躍如である。最後に、「科学と文学 Ⅱ」。寺田自身が影響を受けた(勿論、漱石を含む)文学者や文学体験、「科学と文学」の共通要素が<言葉>である事を述べた後で、自然現象を全て記述出来る微分方程式を見つける<実験>が文学なのではないかと問題提起する。その後も「科学と文学」の国境の無さを謙虚に綴って行く。エッセーの名手寺田が、「科学者が文学に貢献し得る一つの最も適当な形式がエッセー」と語っているのは真に興味深い。
映画、連句、俳諧を含む文学(芸術)に通暁した寺田が「科学と文学」の類似性を謙虚に語った名著だと思った。
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科学と文学 (角川ソフィア文庫) 文庫 – 2020/7/16
寺田 寅彦
(著)
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科学と芸術が結合した名随筆。
「科学の世界は国境の向うから文学の世界に話しかける」(「文学と科学の国境」)。日本の伝統文化への強い愛情を表した寺田寅彦。芭蕉連句を映画のモンタージュ構成や音楽の楽章に喩えるなど、ジャンルを越えて芸術の本質に迫る眼差しをもっていた。科学者としての生活の中に文学の世界を見出した「映画芸術」「連句雑俎」「科学と文学1」「科学と文学2」の4部構成。解説・角川源義、川添愛
「科学の世界は国境の向うから文学の世界に話しかける」(「文学と科学の国境」)。日本の伝統文化への強い愛情を表した寺田寅彦。芭蕉連句を映画のモンタージュ構成や音楽の楽章に喩えるなど、ジャンルを越えて芸術の本質に迫る眼差しをもっていた。科学者としての生活の中に文学の世界を見出した「映画芸術」「連句雑俎」「科学と文学1」「科学と文学2」の4部構成。解説・角川源義、川添愛
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2020/7/16
- 寸法10.6 x 1.1 x 15 cm
- ISBN-104044005877
- ISBN-13978-4044005870
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著者について
●寺田 寅彦:1878~1935年。東京生まれ、高知県で育つ。東京帝国大学物理学科卒業。理学博士。東京帝国大学教授、帝国学士院会員などを歴任。東京帝国大学地震研究所、理化学研究所の研究員としても活躍。物理学者、随筆家、俳人。著書に『蒸発皿』『万華鏡』『柿の種』『蛍光板』などがある。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2020/7/16)
- 発売日 : 2020/7/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 256ページ
- ISBN-10 : 4044005877
- ISBN-13 : 978-4044005870
- 寸法 : 10.6 x 1.1 x 15 cm
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