たくさんの本を読んでいるが、
近年、最も衝撃と影響、そして感銘を受けた。
特に、最後の主人公、三木清の在り方には、ずっと考えさせられている。
「人間は考える葦である」
この言葉の真の意味に、初めて触れた気がした。
人間は、どうしようもなく愚かしい。
一方で、信じ難いほど崇高でもある。
その人間の両面が、これでもかというほど、胸に迫る。そんな物語である。
小林多喜二が、三木清が、殺されない世界にはなった。そのことに、素直に安堵して生きていいのか。
これからも考え続けたい。
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アンブレイカブル 単行本 – 2021/1/29
柳 広司
(著)
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罪は捜すな、仕立て上げろ
1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴が迫るなか、罪状捏造に走る官憲と、信念を貫く男たちとの闘いが始まった……。
『蟹工船』の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。
反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬(つる・あきら)。
同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。
不遇にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。
法の贄(にえ)となりながら、男たちは己の信念を貫いた。
1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴が迫るなか、罪状捏造に走る官憲と、信念を貫く男たちとの闘いが始まった……。
『蟹工船』の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。
反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬(つる・あきら)。
同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。
不遇にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。
法の贄(にえ)となりながら、男たちは己の信念を貫いた。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2021/1/29
- 寸法13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-104041109418
- ISBN-13978-4041109410
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出版社より
商品の説明
著者について
●柳 広司:1967年生まれ。2001年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で朝日新人文学賞受賞。09年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編及び連作短編部門を受賞。同年刊行の『ダブル・ジョーカー』は、『ジョーカー・ゲーム』に続き二年連続で「このミステリーがすごい!」の二位に選ばれる。主著に「ジョーカーゲーム」シリーズ、『ロマンス』『楽園の蝶』『象は忘れない』『風神雷神 風の章 雷の章』『太平洋食堂』などがある。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2021/1/29)
- 発売日 : 2021/1/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4041109418
- ISBN-13 : 978-4041109410
- 寸法 : 13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 379,307位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 9,132位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1967年三重県生まれ。神戸大学法学部卒業。2001年『黄金の灰』でデビュー。同年『贋作「坊ちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞受賞。08年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『パルテノン』(ISBN-10:4408550078)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
治安維持法と特高(特別高等警察)による理不尽な検挙、拷問、投獄の嵐が吹き荒れる時代にあって、自らの信念を敢然として貫き通した日本人がいたことの素晴らしさ。そこが一番、印象に残りました。
なかでも、第二話「叛徒(はんと)」に登場する川柳作家・鶴彬(つる あきら)と、第四話「赤と黒」に登場する哲学者・三木清(みき きよし)の二人の言動には、胸を強く打たれましたね。三木清の次の台詞なんか、実に良いじゃないですか。しびれました。
《参加した結果が後世〝歴史〟と呼ばれるのだとすれば、自分が生きているこの唯一の時間、唯一の歴史を、他人任せにしないで能(あた)う限りの力を尽くす。その上で、結果は後世の判断に任せる。それが、いまを生きていると胸を張って言える唯一の在り方ではないだろうか》角川文庫 p.269
内務省官僚としての業務を粛々とこなしていくクロサキの、いかにも上層役人ならではの理屈と生き方には、どうしようもない嫌悪感を覚えました。
人間としての在り方、道徳心を放棄していささかも恥じるところのないクロサキの言動、生きる姿勢って、現代の老害政治家、腹黒官僚、独裁学長 etc. etc. に通じるところ、あるんじゃないかなあと、そんなことも思ったんすけどね。
文庫版、巻末解説の森 絵都(もり えと)さんの文章も、共感するところが多く、読みごたえがありました。
なかでも、第二話「叛徒(はんと)」に登場する川柳作家・鶴彬(つる あきら)と、第四話「赤と黒」に登場する哲学者・三木清(みき きよし)の二人の言動には、胸を強く打たれましたね。三木清の次の台詞なんか、実に良いじゃないですか。しびれました。
《参加した結果が後世〝歴史〟と呼ばれるのだとすれば、自分が生きているこの唯一の時間、唯一の歴史を、他人任せにしないで能(あた)う限りの力を尽くす。その上で、結果は後世の判断に任せる。それが、いまを生きていると胸を張って言える唯一の在り方ではないだろうか》角川文庫 p.269
内務省官僚としての業務を粛々とこなしていくクロサキの、いかにも上層役人ならではの理屈と生き方には、どうしようもない嫌悪感を覚えました。
人間としての在り方、道徳心を放棄していささかも恥じるところのないクロサキの言動、生きる姿勢って、現代の老害政治家、腹黒官僚、独裁学長 etc. etc. に通じるところ、あるんじゃないかなあと、そんなことも思ったんすけどね。
文庫版、巻末解説の森 絵都(もり えと)さんの文章も、共感するところが多く、読みごたえがありました。
2022年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
数編になっていて
一気に読み切った
暗い時代を切り取った
一気に読み切った
暗い時代を切り取った
2024年3月29日に日本でレビュー済み
第二次世界大戦の時代を描いた短編集である。
・雲雀(ひばり)
小説家の小林多喜二。作品を読んだことはないが、名前ぐらいは知っている。その多喜二が、蟹工船について取材している。もちろん、新しい小説のためである。その取材を受けた萩原と谷だが、2人はクロサキという内務省、特高の役人から、蟹工船での体験を話すように頼まれる。金をもらった2人は、多喜二の取材に応じる。多喜二から共産主義者の情報を聞き出すのが目的のようだ。つまりスパイである。谷の提案で、多喜二の暮らす小樽に行くことにした2人。だが、そこで目にしたのはまっとうな生活をしている多喜二だった。多喜二を罠にかけようとするクロサキだったが……。労働の本質を考えさせられる。
・叛徒
軍隊で軍人の非行を取り締まる憲兵を務めている丸山に、クロサキが接近した。目的は川柳作家で共産主義者の鶴彬(つるあきら)のことである。丸山は鶴を憲兵に入れるつもりだった。丸山の考えでは、鶴は共産主義者ではない。鶴が憲兵に向いていると考えたのだ。しかし、鶴は「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」といった川柳を作っていた。鶴の将来はどうなるだろうか。あまりキレが感じられない短編だった。
・虐殺
時代はやはり戦時中。志木は中央公論社に勤める和田と会っていた。2人はウマが合い、親しくなっていた。和田によれば最近、知り合いが次々に消えていくという。出版社の社員が神奈川県の特高に連行されているようなのだ。2人が所属している「政治経済研究会」が理由だろうか。志木が知り合いの巡査部長に聞くと、神奈川の特高は内務省のクロサキに会ってから人が変わったという。推理の末、志木がたどり着いた結論とは。軍国主義の怖さが分かる。
・矜持
内務省のクロサキ参事官が中心の話である。共産主義者を罠にかけ、処罰しようとするクロサキ。この短編では、クロサキの経歴を知ることができる。内務省で参事官になるだけあって、勉強は得意だった。大学は東大に進んだ。しかし、彼は常に三木清と比較された。清は一高から京大に進学し、「京大きっての秀才」と言われた。しかし、その著書が問題になり、特高に検挙された。クロサキはその後に内務官僚として出世していった。仕事として、三木清の著作や動きは把握していた。その後、共産主義も受け入れていた清は、再び特高に引っ張られることになる。
どの話にもクロサキが関わってくるが、彼は正義漢ではない。特高の責任者として戦争中の軍部の愚かしさを象徴している存在である。同じ戦時中を描いた「ジョーカー・ゲーム」とは対照的で、読後に苦々しさが残る短編集になっている。
・雲雀(ひばり)
小説家の小林多喜二。作品を読んだことはないが、名前ぐらいは知っている。その多喜二が、蟹工船について取材している。もちろん、新しい小説のためである。その取材を受けた萩原と谷だが、2人はクロサキという内務省、特高の役人から、蟹工船での体験を話すように頼まれる。金をもらった2人は、多喜二の取材に応じる。多喜二から共産主義者の情報を聞き出すのが目的のようだ。つまりスパイである。谷の提案で、多喜二の暮らす小樽に行くことにした2人。だが、そこで目にしたのはまっとうな生活をしている多喜二だった。多喜二を罠にかけようとするクロサキだったが……。労働の本質を考えさせられる。
・叛徒
軍隊で軍人の非行を取り締まる憲兵を務めている丸山に、クロサキが接近した。目的は川柳作家で共産主義者の鶴彬(つるあきら)のことである。丸山は鶴を憲兵に入れるつもりだった。丸山の考えでは、鶴は共産主義者ではない。鶴が憲兵に向いていると考えたのだ。しかし、鶴は「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」といった川柳を作っていた。鶴の将来はどうなるだろうか。あまりキレが感じられない短編だった。
・虐殺
時代はやはり戦時中。志木は中央公論社に勤める和田と会っていた。2人はウマが合い、親しくなっていた。和田によれば最近、知り合いが次々に消えていくという。出版社の社員が神奈川県の特高に連行されているようなのだ。2人が所属している「政治経済研究会」が理由だろうか。志木が知り合いの巡査部長に聞くと、神奈川の特高は内務省のクロサキに会ってから人が変わったという。推理の末、志木がたどり着いた結論とは。軍国主義の怖さが分かる。
・矜持
内務省のクロサキ参事官が中心の話である。共産主義者を罠にかけ、処罰しようとするクロサキ。この短編では、クロサキの経歴を知ることができる。内務省で参事官になるだけあって、勉強は得意だった。大学は東大に進んだ。しかし、彼は常に三木清と比較された。清は一高から京大に進学し、「京大きっての秀才」と言われた。しかし、その著書が問題になり、特高に検挙された。クロサキはその後に内務官僚として出世していった。仕事として、三木清の著作や動きは把握していた。その後、共産主義も受け入れていた清は、再び特高に引っ張られることになる。
どの話にもクロサキが関わってくるが、彼は正義漢ではない。特高の責任者として戦争中の軍部の愚かしさを象徴している存在である。同じ戦時中を描いた「ジョーカー・ゲーム」とは対照的で、読後に苦々しさが残る短編集になっている。
2022年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
初めての作家。着想が素晴らしい。”今”多くがシンクロしている。
2021年3月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小林多喜二(小説家)、鶴彬(川柳作家)、横浜事件の犠牲者(神奈川県の特高警察による言論関係者への捏造事件による弾圧)、三木清(哲学者)をテーマにした短編によって構成された小説集である。
横浜事件を除けば、官憲の拷問、過酷な獄中生活によって死に至った人達だ。横浜事件も生存者はいるものの、拷問による死者を出している。
その夫々の物語を紡ぐ人物として、弾圧する側の高級官僚(内務省の特高警察幹部)のクロサキを配した所が、この小説集の鍵となる。
このクロサキなる人物は、一高から東京帝大へ進んだ秀才である。学識も深く、世の中の仕組みを正確かつ冷静に理解した上で、弾圧を指揮しているのだ。左翼運動がまだ盛んであった時代に学生生活を送っており、自分が弾圧される側に回っていたかも知れない事も承知している。その上で体制側に立つ事を選んだのだ。
小林多喜二(小説家)、鶴彬(川柳作家)、横浜事件の犠牲者(神奈川県の特高警察による言論関係者への捏造事件による弾圧)、三木清(哲学者)を「Unbreakable」、クロサキを「Breakable」とすれば、この小説集を読み解く事は容易である。
だが、この「Unbreakable」の中で、今日でも多くの若い人たちに読み継がれているのは小林多喜二だけだろう。さらに言えば、小林多喜二が読みつがれなければならないと言うことは、小林多喜二の望むような「世の中」や「人々の幸せ」が実現していないと言うことなのだ。
この小説集は「三木の死に衝撃を受けたGHQは治安維持法廃止を指示。同年十月、治安維持法は特別高等警察(特高)とともに廃止された。」と言う結語で幕を閉じる。
クロサキのその後は書かれていない。公職追放となり、職を転々とした上で失意の人生を終えるか、米国または日本の治安機関・情報機関の高級エージェントとして、怪しげな会社や団体の幹部として裕福な生活を送ったのかの何れかだろう。何れにしても、クロサキが「良い一生であった」と人生を回顧する事はなさそうだ。クロサキは確かに「Breakable」だ。
果たして、クロサキを能吏として駆使していた権力も「Breakable」なのだろうか。
このように書くと、大変、理屈っぽい本に思われてしまうが、次々と場面を変え、時間を前後させると言う、著者の小説作りの力量は大したもので、一気に読めてしまった。
横浜事件を除けば、官憲の拷問、過酷な獄中生活によって死に至った人達だ。横浜事件も生存者はいるものの、拷問による死者を出している。
その夫々の物語を紡ぐ人物として、弾圧する側の高級官僚(内務省の特高警察幹部)のクロサキを配した所が、この小説集の鍵となる。
このクロサキなる人物は、一高から東京帝大へ進んだ秀才である。学識も深く、世の中の仕組みを正確かつ冷静に理解した上で、弾圧を指揮しているのだ。左翼運動がまだ盛んであった時代に学生生活を送っており、自分が弾圧される側に回っていたかも知れない事も承知している。その上で体制側に立つ事を選んだのだ。
小林多喜二(小説家)、鶴彬(川柳作家)、横浜事件の犠牲者(神奈川県の特高警察による言論関係者への捏造事件による弾圧)、三木清(哲学者)を「Unbreakable」、クロサキを「Breakable」とすれば、この小説集を読み解く事は容易である。
だが、この「Unbreakable」の中で、今日でも多くの若い人たちに読み継がれているのは小林多喜二だけだろう。さらに言えば、小林多喜二が読みつがれなければならないと言うことは、小林多喜二の望むような「世の中」や「人々の幸せ」が実現していないと言うことなのだ。
この小説集は「三木の死に衝撃を受けたGHQは治安維持法廃止を指示。同年十月、治安維持法は特別高等警察(特高)とともに廃止された。」と言う結語で幕を閉じる。
クロサキのその後は書かれていない。公職追放となり、職を転々とした上で失意の人生を終えるか、米国または日本の治安機関・情報機関の高級エージェントとして、怪しげな会社や団体の幹部として裕福な生活を送ったのかの何れかだろう。何れにしても、クロサキが「良い一生であった」と人生を回顧する事はなさそうだ。クロサキは確かに「Breakable」だ。
果たして、クロサキを能吏として駆使していた権力も「Breakable」なのだろうか。
このように書くと、大変、理屈っぽい本に思われてしまうが、次々と場面を変え、時間を前後させると言う、著者の小説作りの力量は大したもので、一気に読めてしまった。
2021年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み終わって、予想通り暗澹たる気持ちになりましたが、次第に、主人公達 敗れざる者たちの不屈の精神と行動へ静かな感動が広がって、この本に出会えた喜びを、噛み締めました。
主人公達への鎮魂として、大切に、読み返していくつもりです。
主人公達への鎮魂として、大切に、読み返していくつもりです。
2021年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「D機関」シリーズ以来になりますが、柳広司の書下ろし「アンブレイカブル」(角川書店)を読み終えました。内務省官僚・クロサキを狂言回しとした連作短編集のような体裁を持った長編小説。4つの短編から構成されています。時代は、1900年代初から敗戦まで。
「雲雀」・・・小林多喜二。蟹工船という名の地獄で身を削った二人から、多喜二は蟹工船での現実をヒアリングします。多喜二を罠にかけようとする特高。軽やかに物語が反転します。一人目のアンブレイカブル。
「叛徒」・・・1930年代か?川柳作家、鶴彬。特高と憲兵。盧溝橋事件。憲兵・丸山は「鶴彬」の中に己が弟の姿を発見します。川柳とポンチ絵。二人目のアンブレイカブル。
「虐殺」・・・ゾルゲ事件。暗号。論理ならざる論理。後半のぞっとするようなキレ。若き編集者たちという名のアンブレイカブル。
「矜恃」・・・三木清。最後の多くの犠牲者たちとハンナ・アーレントを思いながら、私はクロサキと共にそっと息をつきました。
ミステリ短編としては、「雲雀」と「虐殺」が絶品です。
言論統制。束縛された自由。特権階級。匿名の密告。官僚たちの忖度。ここで描かれた世界は<コロナ禍>のこの国と何と似ていることでしょう。私は残念なことに今日、今、この時、この国に「アンブレイカブル」を見つけることができず、自分もまた何物でもないことに気づかされることになりました。
時代に翻弄されながらも愚直に己の信念に従う「敗れざる者たち」を描いたとてもブレイカブルな短編集だと思います。
そう言えば、<海軍>にいたことを誇らし気に語っていた大正生まれの私の父親はあの戦争を語る時、常に「大東亜戦争」と呼んでいました。
「雲雀」・・・小林多喜二。蟹工船という名の地獄で身を削った二人から、多喜二は蟹工船での現実をヒアリングします。多喜二を罠にかけようとする特高。軽やかに物語が反転します。一人目のアンブレイカブル。
「叛徒」・・・1930年代か?川柳作家、鶴彬。特高と憲兵。盧溝橋事件。憲兵・丸山は「鶴彬」の中に己が弟の姿を発見します。川柳とポンチ絵。二人目のアンブレイカブル。
「虐殺」・・・ゾルゲ事件。暗号。論理ならざる論理。後半のぞっとするようなキレ。若き編集者たちという名のアンブレイカブル。
「矜恃」・・・三木清。最後の多くの犠牲者たちとハンナ・アーレントを思いながら、私はクロサキと共にそっと息をつきました。
ミステリ短編としては、「雲雀」と「虐殺」が絶品です。
言論統制。束縛された自由。特権階級。匿名の密告。官僚たちの忖度。ここで描かれた世界は<コロナ禍>のこの国と何と似ていることでしょう。私は残念なことに今日、今、この時、この国に「アンブレイカブル」を見つけることができず、自分もまた何物でもないことに気づかされることになりました。
時代に翻弄されながらも愚直に己の信念に従う「敗れざる者たち」を描いたとてもブレイカブルな短編集だと思います。
そう言えば、<海軍>にいたことを誇らし気に語っていた大正生まれの私の父親はあの戦争を語る時、常に「大東亜戦争」と呼んでいました。