褒めすぎかもしれませんし、作品の様相はまったく異なりますが、オーウェルの「一九八四年」、ハクスリーの「素晴らしい新世界」に匹敵する未来予言小説です。日本が誇っていい作品のひとつに挙げて間違いないでしょう。
昨今の軽くて読みやすい小説とは異なり、文体も硬く、こうした小説にありがちな科学的知識の過剰さや、人類とは何者かという哲学的な思想についての叙述が多く、ともすると作者の思いや主張が過剰に作品に出過ぎていると感じられてしまう面は否めませんが、これらの叙述があるからこそ濃密で読み応えのある作品なのです。
小説として読んで面白いとか、ストーリー展開が起伏に富んでいる作品を期待している読者には期待はずれかもしれませんが、単純なパニック小説ではない高尚な小説なのでそんなことを求めるものではありません。
コロナ禍を60年前に予言したと言ってもいいこの作品。
その当時はまだウイルスと菌の違いなど一般人で知っている人はほとんどいなかったでしょうし、気にも留めていなかったでしょう。私もこの作品を読んでウイルスの特性を初めて知った気がします。
コロナもウイルスですが、どうして菌のように現代の医学で退治することができないのかもわかりました。
小松左京さんの先見性は素晴らしいのに、人類は60年経ってもウイルスを退治する方法を見出すことができず、何とかワクチンによって体内に抗体を作る方法しかありません。コロナワクチンに限らず、ワクチンの副作用で重篤な状態に陥る人が続出しても為すすべもないのが2024年のこの世界です。
私たちにできることは、こうした事実をきちんと学び、またいつか新たな感染症が誕生したときに、せめて心の準備と覚悟だけです、今のところ。
そのためにも多くの人にとって必読の書です。
そしてこの作品の素晴らしいところは、感染症だけではなく核戦争などの人類の愚かな武器開発、戦争を7止められない愚かさ、欲望と権力に塗れた政治等々、現代の人類が解決できていない諸問題についてもきちんと言及されていることです。
コロナ禍がようやく収まりつつある中で、ロシアとウクライナの終わらない戦争、イスラエルとハマスの終わらない殺戮合戦が続く今この時にこそ、「復活の日」は何らかの道しるべになる作品だと思います。
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復活の日 (角川文庫) 文庫 – 2018/8/24
小松 左京
(著)
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人類の滅亡と復活を描いた、傑作SF小説!
吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジェラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める――。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。著者渾身のSF長編。
吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジェラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める――。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。著者渾身のSF長編。
- 本の長さ464ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2018/8/24
- 寸法10.6 x 1.8 x 15 cm
- ISBN-10404106581X
- ISBN-13978-4041065815
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商品の説明
著者について
●小松 左京:1931年大阪生まれ。京都大学文学部卒。SFマガジン掲載の「易仙逃里記」で商業誌デビュー。以後「空中都市008」「復活の日」「アメリカの壁」など、鋭い視点で時代を予知的に描き出した作品を次々と発表し、今なお読み継がれるSFの名手。「日本沈没」は上下巻あわせ400万部を超え、社会現象を巻き起こした。星新一、筒井康隆と並び、日本のSF御三家と称される。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA; 一般文庫版 (2018/8/24)
- 発売日 : 2018/8/24
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 464ページ
- ISBN-10 : 404106581X
- ISBN-13 : 978-4041065815
- 寸法 : 10.6 x 1.8 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 84,261位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1931年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。星新一、筒井康隆とともに「御三家」と呼ばれる、日本を代表するSF作家(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 小松左京セレクション1 宇宙漂流 (ISBN-13: 978-4591118603)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年5月27日に日本でレビュー済み
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2024年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
発想は素晴らしい。ここ席数年間に世界を恐慌に落とし入れた新型ウィルスのコロナ禍による甚大な被害と、人々の混乱と不安をまさに予見していたような深い洞察力を備えたストーリーである。
だが読み進めるには、ある種の覚悟が必要である。悲惨過ぎて切なくなる。SFというより、科学的根拠に基づいた思想書のような印象だ。難解な科学的解説が延々と詳細に述べられる箇所が多いが、正直に言えば私にはさっぱら分からなくて、斜め読みした。だが、つい最近に人類がパンデミックの脅威に直面した事実を考えると、作者の科学データによる想像力と予見能力には驚嘆するばかりだ。
小松左京が一貫して求めているテーマは、生物としての人間の善と悪の意識である。これを究極に追求すれば、必然的に破壊と復活、崩壊と再興の無限なループとなる。人間は過去の歴史を学ぶことはあっても、残念ながら真実に悟らない。悪意なく、あるいは正義と錯覚して、人間は古代から現代まで人間同士の殺戮を飽くことなく繰り返している。
本書では、人類を破滅させた新型ウィルスは、実は某国の細菌兵器だったと言及している。人間の意識による悪への傲慢な挑戦なのだ。SFという形式を借りて、作者が60年前に発した人間への警告である。
だが読み進めるには、ある種の覚悟が必要である。悲惨過ぎて切なくなる。SFというより、科学的根拠に基づいた思想書のような印象だ。難解な科学的解説が延々と詳細に述べられる箇所が多いが、正直に言えば私にはさっぱら分からなくて、斜め読みした。だが、つい最近に人類がパンデミックの脅威に直面した事実を考えると、作者の科学データによる想像力と予見能力には驚嘆するばかりだ。
小松左京が一貫して求めているテーマは、生物としての人間の善と悪の意識である。これを究極に追求すれば、必然的に破壊と復活、崩壊と再興の無限なループとなる。人間は過去の歴史を学ぶことはあっても、残念ながら真実に悟らない。悪意なく、あるいは正義と錯覚して、人間は古代から現代まで人間同士の殺戮を飽くことなく繰り返している。
本書では、人類を破滅させた新型ウィルスは、実は某国の細菌兵器だったと言及している。人間の意識による悪への傲慢な挑戦なのだ。SFという形式を借りて、作者が60年前に発した人間への警告である。
2021年12月1日に日本でレビュー済み
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読んでいるうちに今のコロナと重なって怖くなりました。
2023年12月5日に日本でレビュー済み
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高校生のころ読んだ記憶があり、映画化された時には少々ガッカリしたのを憶えています。コロナを契機に、読み返したいと思い購入しました。なんだかコロナ渦を予言したような内容です。日本沈没も読みましたが、小松左京さんは素晴らしい科学者ですね。
2023年11月26日に日本でレビュー済み
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学生です。やっぱりこの手の小説は自分によく刺さりますね。最初から最後まで飽きずに読めます。
2023年10月30日に日本でレビュー済み
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ウィルスや細菌の基礎知識が解りやすく説明されミクロ以下の世界からマクロの人類が崩壊する過程がよく書かれています。ただ、残念ながら解らないままイメージだけで読んだ気分になる方がちらほら。出版社の煽りなどもコロナ絡みで創られていましたが、本作を読めば「新型コロナって病気じゃないよね」と基礎知識レベルで理解できます。ある意味で偽パンデミックの啓発本……出版社すら「読んでない/理解できなかった」んでしょう。記述はとても解りやすいので「読めるか読めないか」は基礎知識の有無ではなく向き不向きの問題です。自分がハードSFに向いているかどうかテストできる作品なのではないでしょうか。