「漱石と・・」の組み合わせで思い浮かぶのは俳句、絵画、禅仏教などで、鉄道というのは珍しい。確かに小説のなかには鉄道のシーンがよく出てくるし、松山には坊ちゃん列車、上熊本駅前には漱石の銅像がある。さらに親友には満鉄総裁を務めた中村是公もいるなど漱石と鉄道との関わりは深いのかもしれない。
著者は、漱石や小説の主人公が乗ったと思われる列車を特定するのが趣味のようで、小説の時刻を手がかりに、時刻表と格闘しながら推理を巡らせている。タイトルにあるように漱石と鉄道の関連についての記述がメインだが、鉄道の歴史や各地への紀行などを加えて分量を膨らませているようにも感じられた。
本書の対象読者は鉄道ファンと漱石の研究者と推察されるが、どちらかというと鉄道への興味に傾斜している。漱石の研究者にとってはオリジナルな情報や考察が少ないので、あまり楽しめないのではないかと思う。
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