弾丸にあたりたふれしは誰そふるさとの母の文をばふところにして(落合直文)
この髪をそめてもゆかん老が身の残すくなき世のおもひ出に(下谷老人)
息のをの絶むとすれど笛の音を猶たゝざりしますらをあはれ(佐佐木信綱)
村里は残るくまなくやきうせて雉子鳴く野となりにけるかな(渡辺重綱)
からあやを大和錦にくらふれはしなくたりてもみゆるいろかな(弾琴緒)
おもしろし、千載一遇このいくさ、/大男児、死ぬべき時こそ来りけれ。/けふきけば、平壌のいくさも、勝てりとか。/長駆して、こたびはつかむ奉天府。(与謝野鉄幹)
もののふの屍をさむる人もなし菫花さく春の山陰(正岡子規)
中垣のとなりの花の散る見てもつらきは春のあらしなりけり(樋口一葉)
よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ(明治天皇)
にくにくしロシヤ夷を片なぎに薙ぎて尽さね斬りてつくさね(伊藤左千夫)〔ほか〕